第六十一録:向き合う者 三節「決して消えない過去」
「…許しているか、か。」
「…………ッ」
アリアの顔が強張る、彼女が抱えるトラウマは私の…私の亡き妹が関係している。
最初から恨んでなどいない、アレに彼女の責任など何もない。
不運と言わざる得ない状況だった…私も両親もそう思っている。
しかしアリアは許される事を拒んだ、それは許されないほうが、恨まれるほうが楽だったから。
────あぁ…懺悔室はなんと楽な罪の告白場だろうと今つくづく実感をする。
私の目の前にはゴルドーがいる、今まで避けに避け続けて拒絶していた人物。
机の下、膝に置いた両手が震えている…恐ろしい。
彼は何と言うだろうか、恨みか?許しか?どちらも恐ろしい、答えを聞きたくない。
今すぐにでも逃げ出してしまいたい、恨んでいるものとして勝手に決めつけて逃げて楽をしたい。
私の罪…私がゴルドーの妹を死に至らしめてしまった、私がいながら死なせてしまった。
ゴルドーを目の前にして私が見ない様にしていた記憶の蓋が開かれてゆく。
──12年前。
まだ…純粋だった13歳だった私とゴルドー。
同じ村に生まれ同い年の仲の良い…いわゆる幼馴染という関係。
そして…そして私たちより5歳下であるゴルドーの妹カレン、私はあの子を本当の妹の様に想いカレンもその様に接してくれていた。
事件が起きたのは…なんでも無い普通の日だった、ただただいつもの日常。
「アリアおねぇさん!こっち!」
「あまり離れちゃダメよ」
少し前から振り返り太陽の様な笑顔で私に手を振る幼いカレン。
こちらも自然と頬が上がり笑顔になった、日差しが眩しい太陽が1番真上の時間。
私とカレンは村からさほど離れていない場所で散歩をして近くの草原で花を積んでいた。
平和な日常…楽しそうに花を積むカレンを私は眺めてそう思っていた。
だが…そんな平穏は一瞬にして崩れ去る。
ヴァィアァァァァァァァッ!!!
体の芯から恐怖を感じる様な邪悪な咆哮があたりに響き渡った。
その声にカレンは笑顔は消え去り今にも泣き出しそうな顔をして私を見る。
私は異常を察知、すぐさまカレンを抱き抱えて村の方へ走り出す。
ここは村から近い、それにあの声は村まで聞こえているはずですぐに大人が来る、私の脳裏にゴルドーが思い浮ぶ、きっと彼が来てくれる。
しかし……そんな淡い期待は一瞬で消え去った
「アリアおねぇさん!う、上!!」
私にしがみつくカレンが怯えた涙声で必死に伝える、その言葉に上に視線を向けた。
太陽で明るいはずが私たちにだけ影が差して薄暗くなる。
突如として頭上から眼前に現れたのは禍々しい魔物…いや悪魔と言っていい風貌。
恐怖で足がすくむ、動けない否動けば狩られると本能的に理解する。
無情な事実は動かなくとも狩られてしまうという…どうしようもない現実。
私は覚悟を決めた。
せめて…せめてカレンだけでも守らないといけない、そう心に決めると嘘の様に体が動く、頭がクリアになる。
「ホーリースパークル!!」
「ガァッ!?」
無詠唱での魔術使用、刹那の閃光が魔物の視界を数秒奪う。
私は魔物の右の脇を素速く慎重に通り過ぎる




