第六十一録:向き合う者 一節「山積み」
─────「この報告は真か?ゴルドーよ」
フィリッツランド城、国王の執務室でアレクサンダーは受け取った報告書に目を通すがその事実を確認する様に目の前の近衛騎士であるゴルドーに問う。
「はい、アレクサンダー様。ヨリツグ殿とヤテンラ殿がルミナスの魔物を討伐いたしました。」
私も王と同じく報告を受けた時は驚いた…あの魔物はこの国の暗部と言っていい存在。
150年に一度の生贄、今年はその年だったはずだったが罪人を集める事をしなかった。
それはヨリツグ殿たちのおかげではなく貴族であるルーディル家当主が自滅覚悟で計画をしていたと、この様な事後で報告書と共に知る事になった。
「…彼らには感謝せねばな」
「はい。」
アレクサンダー様は少し疲れた様子で報告書を机に置いて右手で眉間を揉む。
目下のお悩みは───
「やはり…殺害派は"勇者"を向わせろと言っていますか?」
「あぁ…だが今回の件で少しの間は黙らせれるだろうから正直ホッとしている。」
魔王と対をなす"勇者"が存在していた…それも異邦者の中にだ。
他世界に渡った魔王ノ宿木を追いかける様にして同じく異邦者へその力を宿した。
「勇者の力を有する者がいるのは本来なら喜ばしい事この上ないのだがな…まさかこんな事態になるとは。」
「運命の悪戯ですね…」
「だとすれば運命はよほど私たちが嫌いかもしれんな」
ハハハと笑いながらそう冗談を言うアレクサンダー様、確かに悪戯が過ぎる。
勇者と魔王…両方の力が我が陣営にいると言っていい、これだけであれば悪い事ないが問題は魔王ノ宿木と勇者が相対すればどうなるかわからないと言うことだ。
「まぁ…この件は一先ずよいとして、降魔礼賛の動向はどうだ?」
「は、そちらはザディルが鋭意捜索中です。」
「そうか….」
こちらに関しては伝えれる事は前回の報告からない、魔剣を持ったザディルを信じる他ないだろう。
「異邦者たちの修練も上手くいっている様だな…この調子なら外魔掃討作戦までには間に会う」
「えぇ、みなよく頑張ってくれています。」
ヨリツグ殿と同じく召喚した異邦者は我々近衛騎士の指導の元にその実力を伸ばしている。
「ふむ、報告はこんなものか…ゴルドー下がってよいぞ、ご苦労だった。」
「はっ!失礼します!」
私は敬礼をしてアレクサンダー様の執務室を後に城内の廊下を歩いてゆく。
問題は山積み、特に教会とは表上は何もないが…裏ではもはや戦争寸前の状態。
今、戦争にならずに済んでいるのはアリアの上司であるベロニカ教皇のおかげだろう。
私は心の中で彼女に感謝を告げながらある場所へ足を進めていた。




