第五十九録:行く宛 三節「講義」
夜天羅が驚いた顔でその漂流物…違うな、夜天羅に向けた来空の手紙を手に取る。
発見した時は驚いた…今の今まで手紙なんて直接的なメッセージはなかった。
「それがお二人の目的のものですか?」
「はい、こちら頂いても?」
「もちろんですとも!」
「……ありがとうなんじゃ」
色々と…感じているところはあるだろう、ドロシーの件で少し気が重いこともある。
そこにまさかの恩人からの手紙……いやもしかしたらまさかではないかもしれない、来空は千里眼の持ち主…ありえない事はない。
「他にもお二人の旅に役立ちそうな物があるかもしれません、見て行きますか?」
「是非、見させてください」
夜天羅は大事に手紙を仕舞う、俺たちはアレックスさんの案内の下で蔵を散策する。
夜天羅にとって気晴らしになればいいが…
「おや?魔銃が気になりますか?」
「あ、いやかなり種類があるなと思って」
そこにはずらりと並ぶ銃の数々…気になると言えば気になる、遠距離なら魔法や魔術それに弓な方が有利な気がするがなぜ銃が?
「魔術の方が強い気がするがのう?」
「そうですね、少し魔法史のお話になりますが…今の魔術では確かに対人で魔銃は役に立ちません、しかし昔は違ったのです。」
「ほう!」
「その違いは、魔術の練度です。魔銃は鉄という物理的な弾を射出、当たれば必殺でした。問題は魔術です…魔銃全盛の時代、魔術では物理的な弾は防げなかったのですよ」
「物理的な…でも矢はどうなんです?」
わざわざ複雑な機構を考えなくとも魔力で強化された矢なら威力は弾丸並みかそれを超える。
「確かに矢は物理的な物ですが、矢を魔力で強化してしまうと物質より先に魔力が防御によって弾かれます。」
なるほど…そういうことか、原理自体は俺の解魔ノ瞳と似ている。
つまりだ防御魔術で魔力を弾かれると強化を前提とした力と速さで矢は放たれたるが強化が無くなれば一瞬で壊れるわけだ。
「なるほどのう…矢が壊れてしまうのじゃな」
「そうです、魔術練度が低い時代なので強化術なども今よりずっと弱くて鎧をずっと強化なんてできません。」
「面白い物ですね…」
アレックスさんの講義に近い話を聞いて夜天羅と二人で綺麗に並べられた魔銃へ視線を向けた。そこで一つ…目に留まった物。
「それが気になりますか?」
アレックスさんは慣れた手つきでショーケースから二丁のリボルバーを取り出してくれる。
気になったのは並んでいる銃の全てが全長の長いライフルタイプ、しかしこれだけはリボルバーだった。
「こちらは名工、バレッタ夫妻が互いに送り合った逸品になります。どうぞ手にとってみてください。」
俺と夜天羅の前に並べられた二丁の黒いリボルバー。
夫婦で送り合ったという事は夫婦二人ともがガンスミス、個人の特色がよく出ていた。
角張った太くゴツいバレルにゴツい本体、大口径を納める為の長くでかい弾倉。
俺はそれを手に取ってみる、拳銃から一脱した重量。
「お、おおー!!」
夜天羅が手に取った方は俺の持つリボルバーと対象的に丸みがあるデザインで西部劇に出てきそうな印象を受けた、こちらの方が銃身、弾倉と長く作られている。
だがやはり使用者が身体強化をする前提なためか口径が大きい。
思わず手に取ってはみたが……
「…おれ、射撃はした事ないんだよな。」
相手への牽制用に魔術か何かを覚えようかと悩んではいたが銃という選択肢はアリといえばアリだ。
解魔ノ瞳を全開放しても使用できるのが1番の利点だろうな。




