第五十九録:行く宛 二節「棚から牡丹餅」
───夜明けた朝。
シルビアさんから朝食をいただき夜天羅とこれからどうしようかと相談しようとしていた時だった…アレックスさんが部屋に来た。
「お二人とも!おはようございます。」
「おはようです。」
「おはようなのじゃ」
朝の挨拶を交わす、俺はアレックスさんの手に視線がいく。
昨日は包帯をしていたが今日はもう外している、しかし手には傷跡が残っていた。
「手は大丈夫なんですか?」
「あぁ…これですか?手の機能に問題はないのですが回復魔術を使用しても傷は残ってしまいますね、これを治すには上級回復術師に頼む他ないでしょう」
「無理はいかんぞ?」
「…そうですね、でも私はこれ以上治す気はありません。唯一、奴に歯向かって一矢報いた…その証です」
手をさすりながらも満足気なアレックスさん、そうか…本人からすれば傷の勲章。
となれば俺たちはこれ以上とやかく言うのは野暮だ。
「と、すみません。本題から外れましたね…お二人にはぜひ蔵を見て頂きたいかと」
「蔵?」
夜天羅と俺の声が被り顔を見合わせる、アレックスさんから提案されたのは自身の所有する蔵への招待だった。
「理由は歩きながら話しましょう」
「わー!ドロシーもいくー!!」
そう声を上げて夜天羅に飛びつくドロシー、コイスケはまだ寝ていたい様子だったが俺の影に入りついてくる。
そうして全員でアレックスさんに促されて部屋を出て目的の蔵へと歩みを進める。
「以前…お二人から漂流物を集めているとお聞きしました。」
確かに…どこかの雑談で話したとは思う、もしやわざわざ案内してくれるという事は─
「ここへ蔵のものを写す際に帳簿を確認しましたらそれらしい物がいくつかあったのでお二人にと。」
「おー!ありがとうなんじゃ!」
「ありがとうございます!」
予想外の朗報かもしれない、もし俺たちの目的の物なら大助かりだ。
「さ!着きました、ここが私の家が集めた保険を納めた蔵です」
鍵の束を取り出して門をガチャガチャと弄るアレックスさん、保険?
「保険ですか?」
「えぇ…アブソリュート・グレイシャルもといサタナエル対策の魔道具や資金になる財宝とかですね。」
「なるほどのう」
ガチャリッ…と鍵が開錠される音が聞こえてきた、鍵を仕舞ってアレックスさんが扉を開け放つ。
俺たちは部屋に入っていく、中はよく整理させており物を仕舞い込んでいる雑多な蔵というより博物館みたいな印象を受ける。
「わー!すごい!!!」
「勝手に触ったらいかんぞードロシー」
はしゃぐドロシーを軽く注意しつつある程度は自由にさせておく、目は離せないが…いやいつの間にかコイスケがドロシーの影に移り一緒に行動してくれている。
「こちらが漂流物を保管している場所になります。」
再び、アレックスさんの後ろをついて行く。
しかし…本当にいろんな物がある、華麗で高価な装飾品に古本、刀剣、何かの魔物の剥製…魔道具。
全て売ればどれほどの価値になるか想像できないほどのもので溢れていた。
「この五つが漂流物ですね、何代か前の当主が集めていた様です」
並べられた物を夜天羅と二人で拝見さしてもらう、一目見てわかった、これは───




