第五十八録:在るべき場所へ 五節「魔人」
「!?」
景色が…いやいる場所が変わった。
ほんの今まで二人して寝転がっていたと言うのに夕焼けの浜辺に立っている…そこには何故か不自然に一組のテーブルと椅子。
「な、なんじゃ!?」
「アモンさんの仕業…としか考えられないな」
ここへ来る前の行動はアモンさんがいつの間にか忍ばせていた手紙の封を解いた事。
…無関係とは考えにくい。
「ようこそ!辺獄へ〜♫」
声を掛けられる、女性…いや少女の様な少し幼い嬉しそうな声が聞こえた。
その人物は目の前のテーブルに座ってこちらをニコニコと見つめている。
急に現れた事もそうだが少女がいる事にも驚きだ、アモンさんが現れるならまだ納得なものだが。
「俺はヨリツグだ、君は?…それに辺獄?」
「私ちゃん?私ちゃんはね────」
「こら、アマリリス」
少女が名前を言おうとした時、アモンさんが後ろに現れた。
アマリリスと呼ばれた少女は現れたアモンさんに対して振り返りこう言った。
「ちょっと早いよ、おとーさん」
「父親…じゃと?」
「すまないね、我の娘が」
「いや、まぁ大丈夫です」
驚きで無難な返ししか返せない、二人は親子…となればアマリリスはネローズの妹?
「すまないね、我の娘アマリリスだ。それとここは辺獄…魂と肉体の狭間だよ、今は君たちの魂だけを連れてきた。」
ということは…俺たちは今は幽体離脱みたいな状況だろう。
「じゃ!私は話が終わるまであっち行ってるからね〜」
そう言うとフラッといなくなるアマリリス、アモンさんはやれやれといった表情をしていた…自由だ。
「コホン!さ、気を取り直してだ。二人ともどうぞ座ってくれ。」
椅子の方へ視線を向ける、さっきまで一対しかなかった椅子が一つ増えていた。
そこに俺たち二人は着席する。
「改めて…今回は助かった、魔物に転生されては我ら悪魔や天使では裁く事は出来なかった…化けの皮を剥がすだけではなく倒した事、本当に感謝する。」
「いえ…俺もアモンさんには世話になってますし」
アモンさんには降魔礼賛の件で調べたりしてくれている、悪魔側の問題と言えばそうだが…助言をくれているのは確かだ。
「そういえば…お主よう地獄から出て来れたのう」
確かに…堕天使や降魔礼賛の悪魔の時は腕だけこちらへ干渉したが今回は本人が来た。
「事が事なだけにな、サタナエルは我が地獄を治める前に堕天使たちと大規模脱獄を計画し実行した主犯…我が現世に行かねばな」
「そうじゃったか…苦労しとるのう」
「なに、その分は他を多めに見てもらっている」
大変だろうな、そんな大事件の後に地獄を治めるなんて…すごい人だ。
「そーんなこと言っちゃって〜!ヨリツグたちと別れた後におねーちゃんとこ行ったの私ちゃん知ってるからね!」
「………………」
口を一文字にして押し黙る。
…どうやら悪魔は嘘はつかないが黙秘はできるらしい、やけにサッパリ別れたと思ったらそう言うことか、まぁ仕事をこなしてるから誰も文句は言えまい。
「それは…さておき、君たちを呼んだのは降魔礼賛の件だ。」
やはりそれか…サタンさんが俺たちに用があるとすればそれぐらいだろう。
わざわざ辺獄なんて場所へ俺たちを呼んだんだ誰かに知られる事を最大限危惧して。
「わかった事を伝える、明かせない事もあるがすまない。まず先も言った脱獄の奴らと降魔礼賛は繋がっている…いやいただな」
「それは…今は繋がっていない?」
アモンさんの言い方的にもう今は協力や何らかの繋がりはないだろう。
「サタナエルの魂をバラして記憶を調査したらのちに降魔礼賛を立ち上げたやつが関わっていた…しかし"そいつ"はサタナエルたちで実験をしたかった、サタナエルたちは脱獄して我々に追われない対策が必要だった…」
「利害の一致というやつじゃな」
「その通りだ…かなり厄介なのは"そいつ"は人の魂から悪魔に転生しさらに自身を魔人と称して三度の転生をしている。」
「……そいつの名を聞いても?」
「────カトレア…カトレア・ウィンストン」




