第五十八録:在るべき場所へ 四節「祭りの後に」
「すごいな…」
「じゃ…」
俺も夜天羅もこれだけの歓迎には驚きを隠せなかった、とりあえずテレビなんかで見たパレードの様子を真似して手を振ってはいるもの、内心は緊張感で溢れていた。
ウトリたちは即席で用意したと言っていたにしては豪華で壮大な凱旋パレードで町を練り歩く事になった。
外は歓喜の嵐。
俺たちを英雄と称える町民にぎこちなく手を振ってたりしたが…慣れない事はするもんじゃないな、笑顔を作れた気がしない。
その最中で人々から多かった声は"ルーディル家を助けてくれてありがとう"だった、老若男女問わず。
町を救って〜よりも多かった気がする、アレックスさん一代だけではない…ルーディル家の積み重ねの重みを感じる。
ウトリとクラリアの町民の接し方を見ているとアレックスさんの想いは受け継がれている様に感じた、民衆からすれば高嶺の花なような年配からすれば孫の様な尊敬されつつも親しみやすい見ていてそう思う。
パレードの後…ノウス・ルミナスの新広場でパレード馬車からアレックスさんは改めて町民に向けて演説を始めた。
「みなさん…先日にご説明したとおり私の家は歴史は大勢の犠牲を出してきました、これは変えようない事実です。
皆さんの祖先の誰かを、罪人を仮初の平和のために犠牲にしてきた。その暗部を黙っていて本当に申し訳ない。」
…アレックスさん、その隣にはシルビアさんとウトリにクラリア…ルーディル家総出で深々と頭を下げる。
その沈黙を破る様に大声で誰でもない誰かがヤジを飛ばす。
「ルーディル家からも犠牲が出したり色々頑張ってくれてたんだろ!誰も責めないよ!!」
最初の一言は誰でもない誰か、しかしそれはまた誰か、そのまた誰かへと想いは伝播していき大きな民衆の意思となった。
その言葉を受けてアレックスさんたちは顔をあげた。
「…ありがとうございます。私はこの町に訪れた真の平和を生涯守り…そしてより良い発展を!!またこのアレックス・ルーディルに任せてもらえないでしょうか!!」
パチ…パチパチ…と拍手が鳴り出すとそこからはもう止まらなかった。
拍手、歓声が鳴り響く…この時の町民の思いは一つだったろう。
この真摯な人に私たちを任せたい…と。
「それではヨリツグさん、ヤテンラさん、一言お願いします。」
「!?」
完全に予想外だった、完全に蚊帳の外で拍手を送っていた…のに最後の最後に爆弾が突っ込んできた。
アレックスさんたちが容赦なく横にはけて俺と夜天羅は行かざる得なくなる。
…俺は覚悟を決めてその場所へ立った、民衆の視線が一斉に俺へ集まる。
「あー…正直、気の利いた事はいえません。ただ…俺はただ倒しただけです、それまでのルーディル家の辛く長い過程の最後に必要だった物に過ぎません。」
これ以上は耐えられずに恐る恐る夜天羅へ拡声器を渡すと夜天羅は受け取る。
「そうじゃなぁ…わしから言えるのは"奇跡は起こるべくして起きる"と、過去にわしを救ってくれた者が言っておったのじゃ、そしてこうも言っておった、"奇跡は願い縋り祈るものではない、過去と現在、そして自身と真摯に向き合い歩んだ者が最後に掴む誰かの手"と…」
パチ…パチパチと再びの拍手喝采が起こる、どうやらそれなりに一言が言えた様だ。
そうして…終始、盛況な様子で祭りは終わりを迎えた。
ルーディル邸に用意をされた客室、そこで俺たちは落ち着く。
「あー…びっくりしたぁ」
ベッドに大の字で寝転んであの一言について改めて思い出す。
「ふふ…お前様はすごい緊張しとったのう」
「逆に夜天羅はなんでスラスラ喋れたんだよ」
俺の左腕を枕にしつつ横で寝転ぶ夜天羅は少し揶揄う様に俺の頬を軽く指で突いた。
「なんでじゃろうな?あの時はスラスラと言葉がでてきたんじゃ」
夜天羅はあまり緊張とかしないタイプだから今回もそうだったんだろう。
「あ、そうだコレ」
「お?」
俺はとある事を思い出して服の内ポケットから一冊の封筒を取り出す…
「なんじゃ?それ?」
「アモンさんがくれた手紙だ」
「注意、二人でいる時に開封する事…?」
「そうらしい、開けていいか?」
「うむかまわんのじゃ」
夜天羅の確認を取り俺は封筒に貼ってある封蝋を剥がした、その瞬間────




