第五十八録:在るべき場所へ 三節「希望は雪降る日に」
二人の話を聞いたシルビアさんはすぐにアレックスさんの側に寄り添う。
「アナタ…いいのよ、素直に喜んで!ルーディル家はアナタはもう縛られなくていいのよ!」
「あ、あぁ!本当にッ!ヨリツグさん、ヤテンラさんありがとうございます!!どれほど礼を尽くしても足りない!」
アレックスさんは痛みなど気にすることもなく俺と夜天羅へ握手を交わす。
「よかったです、依頼を達成できて。」
「うむ!」
「ねー!ヤテンラ!ヨリツグ!みて!みて!」
はしゃぐドロシーへ視線を向けると窓に張り付き夢中で眺めている。
「雪が輝いている?」
「ほー…絶景じゃなぁ」
「そうか…もうそんな時間ですか」
ルーディル家…この地に住む人にとってはよくある光景なんだろうか?
「ルミナス祭だね!」
「もしや…アレックスどのの話に出てきた」
「はい、"光雪"と呼ばれるコキュートスから溢れる魔力が雪に濃く混じる年に一回の夜、光雪が降る夜は魔を払う為に町を出て清める…そんな偽の祭りでした。」
「でも!今日から本当だよ!!」
窓から見える幻想的な景色を背にして満面の笑みでそう答えるウトリとクラリア。
そうだ、二人の言う通り今日は本物の魔を祓った日だ。
「その通りじゃ!今日からは本当に意味が逆転するのじゃ」
「えぇ…そうですね、このノウス・ルミナス祭は魔を祓った祭日になるでしょう、お二人が起こしてくれた奇跡の日です」
「さて…では我の様な悪魔は退散しましょう」
「アモンさん!」
アレックスさんが声を掛けて引き留める、向き直した両者。
「貴方と会えてよかったです。」
「ふっ…悪魔に会えてよかったか…次は合わぬ様に生を歩むが良い。」
そう短い言葉を交わして、次は振り向く事はせずに指を鳴らすとアモンさんは消えた。
「?」
俺はアモンさんが消えたと同時に自身の衣服、その内ポケットに微かな違和感を覚えた。
「どうせお父さんの事だから町民の人達には全部話してるんでしょ?」
「当然だとも話しているさ」
町民は知っているのか…ルーディル家のこの町に根ざしていた悪魔の話を。
しかし…今の外の様子を見るに何も問題はなさそうだ。
夜天羅と二人で外の景色に視線を向ける、幻想的な光を放つ雪ではないその下…町民たちが集まりだしていた。
「だからみーんな知ってるよ!魔物が居なくなったってこと!」
「なっ!いつのまに!」
「こっそりねオーダイルに合図を入れたの!」
「そ!お父さんたちが話してる間にね!」
アレックスさんがどういう風な演説をしたかは知らない、だが町民は俺なんかよりアレックスさんをルーディル家がどの様に振る舞ってきたかを知っているだろう、だからこその歓迎されている。
自分の娘からは驚きの言葉を言われてアレックスさんは慌てて窓の下を見てみる。
「じゃあ!みんなでノウス・ルミナス祭を始めようよ!!」
「ほらほら!ヨリツグさんもヤテンラさんも!」
ウトリに急かされる様にして部屋を出てゆくアレックスさんとシルビアさんとクラリアは俺たちに声を掛ける。
「俺たちも行こうか。」
「じゃな!」
「わーい!!」
んにゃーん…にゃー…
楽しさと嬉しさを全身で表すドロシーとは裏腹にコイスケは寒さが少し嫌な様子だったが俺の服の間で暖を取りながら顔は出していた。




