第五十八録:在るべき場所へ 二節「解放」
「なんっ!だと!?」
自身を一族を町を苦しめていた者のその正体がまさかの悪魔。
そして…目の前にも悪魔がいる、アレックスさんの心境は俺なんかでは想像できないほど複雑になっているだろう。
「アレックスさ─」
アモンさんの制止により俺のは発言をやめた…アレックスへ俺はアモンさんは悪くないとそう伝えたかった。
だがアモンさん本人はどんな非難や罵声でも全て受け止めつもりだ。
「ッ…なぜ今、動いたのですか」
あらゆる感情を飲み込み、アモンさんへ何故"今"なのかを問う。
…過去にアブソリュート・グレイシャルが現れたその時に対処をしてくれていれば犠牲は出ていない…何故もっと早くと。
「すまない…地獄の法で動く事ができなかった、"アブソリュート・グレイシャル"という"魔物"に関して"悪魔"である我は関与できなかった…だが"悪魔"である"サタナエル"は別だ、我の口からはこれ以上は言えない」
「………わかり、ましたッ」
アモンさんが伝える事ができるギリギリの発言、アレックスさんはその意図を掴んでいる…納得するほかない。
「…かつて犠牲になった町民の魂に関しては全てサタナエルから回収し天国行きが決まっている、そして君たちもだ。」
「私たちが?天国へ?」
「そうだ、君たちは悪魔の蛮行に耐え犠牲に涙を呑みあらゆる苦渋の果てに悪魔を倒すに至った…そんな君たちを地獄に送るわけにはいかない。もちろん、これから罪を犯す事なく過ごせばだがね。」
生前に悪魔から死後が確定して伝えられるなんてそうそうない事だろう。
アレックスさんは自分の罪咎に覚悟を決めていたそんな人だからこそ……これから憂なく幸せになって欲しいと願う。
「つまりまぁ、君たちは神から許されていたんだよ。」
「ッ!!そんな事を信じろとおっしゃるのですか?」
「そうだ、それに悪魔は嘘をつかない、つけない…悪魔が嘘をつき罪を犯すと"罪獣"と呼ばれ地獄の底の底へ墜つ。だから嘘などつけないのだよ。」
アモンさんの話…それを信用するかどうかはアレックスさん次第だろう。
なにせ確証など得る術がない、世迷言に聞こえても仕方がない。
「…わかりました、信じます。貴方を信じるヨリツグさんやヤテンラさんを。」
「……ありがとう」
「じゃあ!お父さんやったじゃん!
「ねー!もう縛られなくていいんだよ!」
ウトリとクラリアは和気藹々とアレックスさんへ言葉を掛けるが当の本人はまだ理解が、違うか…感情が追いついていない。
アレックスさんの中ではサタナエルを退ければ大金星だったろう、しかしその先の罪や咎を許された。子孫だけでなく本人までも…。
「アナタ!!」
バタンッ!と勢いよく扉が開かれる、アレックスさんの声を聞いて駆け付けたのはシルビアさんだった。
「あ!お母さん!!」
「ウトリ!?クラリア!?それにヨリツグさんたちも!?」
ここから距離のあるはずの場所にいたものが全員この部屋にいる事に驚きを隠せない様子。
「お母さん!あのね────」
ウトリとクラリアの二人からたった今のアモンさんの話をシルビアさんへ伝える。
全てが万事解決した事、その全てをだ。




