第五十八録:在るべき場所へ 一節「ウェルカム・トゥ・ヘル」
「……誰だ。」
俺に向かって飛んでくるサタナエルの首を鷲掴みにした男。
音も気配もなく初めからそこにいたかの様に現れた。見た目は黒いスーツを着こなし髪はオールバックの精悍な顔つきの中年。
「この姿では初め────」
「アァァアアァァァァッ!!邪魔をするなぁ!!アモン・グリモワールッ!!!」
アモン・グリモワール?…グリモワール?
俺の知る人物で該当する人物が一人いる、しかもその人物は半悪魔。
「もしかして…ネローズの父親!?」
「あぁ、正解だよヨリツグ君」
「私を無視するなぁァッ!!いやッ!まて!ま───パチン
指を鳴らす音と共に絶叫していたサタナエルの首が瞬時に消えた…いや違う魂にだけにされた。
「!?」
同時にすぐに違和感に気がつく、俺の体から傷が全て消えていた。
色々と触ったりして確かめるが初めからなかった様に全ての傷がない。
「ついでにね、君の負傷は消しておいたよ。」
アモンさんはそう軽く答えるが…やっている事は軽くなどない、ほとんど奇跡みたいなものだ。
アモンさんの手にはゆらゆらと灰色の魂が揺らめいている。
「うるさいヤツは在るべき地獄へ…さて、まずはヨリツグ君、君に感謝を。」
丁寧に頭を下げてくれるアモンさん。
……やはり、年上だったりにこういう態度を取られるとどうしていいかわからなくなる。
「お前様ー!!」
空からレーヴァテインが着地し夜天羅たちが降りてくる。
「だれー!?」
アモンさんの存在に気がつき真っ先に反応したのはドロシー、興味ありげに見上げていた。
「あぁ…アモンさん、ネローズの父親」
「ほう!?お主が!!」
「??」
ウトリとクラリアは状況が飲み込めず困惑気味の様子…言っていいものか悩む。
今二人の目の前には悪魔がいるとそれも地獄の主がだ。
「ちょうどいい、全員が揃っているね。」
再びパチンと指を鳴らすアモンさん、すると───場所が変わっていた。
「!!!」
全員が驚愕する、今し方まで旧ルミナスにいたはずが屋敷の様な建物の中だった。
「ウトリ!クラリア!それにヨリツグさんたち!?」
「お父さん!?」
「!?」
そこには両手に包帯を巻いたアレックスさんがいた、これは一体どういう魔法だ!?
「すまないね、驚かせて。ここはノウス・ルナミスのルーディル邸だ。」
「……瞬間移動?」
「みたいな物だよ。」
規格外すぎる!俺たちも含めての移動をこんな簡単にか…これが悪魔の頂点に位置する者の実力!
「ルーディル家の方々は初めましてですね、我はアモン・グリモワール、悪魔の長。」
「あ、悪魔!!?!?」
アレックスさん、それにウトリとクラリアの三人の声が重なる。
「ち、ちょっと待ってくれ」
頭を抱えて待ったをかけるアレックスさん、まぁ立て続けに驚く事が起きている。
頭の中を整理するのも仕方がない事だろう。
「なぜ、悪魔が?」
アレックスさんは根本的な部分の何故を問う…そうか夜天羅やアレックスさんにウトリとクラリアもだがアブソリュート・グレイシャルがサタナエルだと知らない。
夜天羅は察しているところはあるがアレックスさんたちからすれば寝耳に水。
「君たちが長年苦しめられていた者は堕天使…いやほとんど悪魔みたいなものだ」




