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異世界帰還録  作者: 夜縹 空継
第四章:オーザンガール編
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第五十七録:身の程を知れ 五節「報いは静かに」

本来なら厳かなはずの教会。

そこに不釣り合いな俺たちと甲高い鉄の声、祈りとは真反対の殺し合い。

サタナエルは酷く警戒をしている…俺が二刀流になっていること、そして壊縁に。

(神刀さえなければヤツと私は互角!過剰強化をすれば私が上!!相手の勝ち筋は限られている!)

(対して私の勝ち筋は奴より強い事!そして────私はもう後のことなど考えない)


「っ!!」

サタナエルの攻撃が異様に重い、過剰強化をしているのだろうが今までの比じゃない。

再生も回復もできない状態でこんなことをするなんて自殺行為に等しいが奴は時間稼ぎをやめて本気で俺を殺すつもりらしい。

だがいくら力が強かろうと技術は俺の方が上、攻撃をいなすのは容易い。

問題は膂力だけではなく速さも上がっている事だ、今まで防御する事が殆どだった俺の斬撃を捉えている。

壊縁を突き刺す隙を作らねばならない。


(グッ!過剰強化の体への負担が予想以上に多い!?氷の侵蝕がジワジワと広がっている!!早くこの人間を仕留めねば!?)

ガァンッ!!教会に響き渡る音、鉄の鼓動。

雪と共に舞う火花…二人の周りはいつの間にか雪の薄化粧が広がる、しかしその中心である人と悪魔の辺りには雪はない…血と火花だけが二人を彩っていた。

「ッ!!!」

紫の残像がサタナエルへ襲い掛かる、大袈裟にそれを避けて距離を開ける。

(クソッ!タチが悪い!!的確に嫌な部分に神刀を差し込んでくる!!)


やはり…壊縁を警戒しているか。

唯一自分の魔法を完全に無効化する物だ、奴の注意がいくのも無理はない。

……仕掛けるなら今だ。

俺はサタナエルへ向かい距離を詰めて刀を振るう、片腕で刀を振るうが両手の時より弱い。

それを補う様にして壊縁を差し込みサタナエルの集中を削ぐ。

俺はわざと壊縁での攻撃を増やしより注意を向けるように仕向けた。


(ヤツも焦っているはずだ!!私を殺すには神刀で首を切るか神刀で魔力を遮断した上で首を斬るか!前者は無理だろう!となれば必然的に後者の選択をする、ならそれを誘って誘導してやる!!)

「ッ!!」

俺の刀がサタナエルの首を捉え斬った手応えがあるが奴の首には傷がない。

傷の転移を使って避けたか、しかしサタナエルはまだ無防備な状態、俺は────

(やはりくるか!!神刀で私を刺し───)

にゃん!


「!?!!??」

突如として鈴を転がした様な猫の鳴き声、混乱するサタナエル。

無理もない自身の背中、腰あたりに壊縁が突き刺さっているのだから。

俺は影に潜んでいたコイスケに壊縁を渡しサタナエルの背後の影から出現させる様にした。

そして、俺は渾身の一刀をサタナエルの首へ振り下ろす。


(ま、ずい、マズイ!マズイ!!!体が動かない!?クソこの、氷の侵蝕がッ───あ…)

死の間際、サタナエルの時間がゆっくりとスローモーションの様にして流れてゆく。

何もできない、ただただ振り下ろされる刃を見つめる事以外、何もできない。

意識だけが先行するばかりで一向に体が動かない、そして…皮膚を裂き肉を裂く感覚が鮮烈で不愉快な感覚に襲われる。

最後の最期、遂に…サタナエルの首が落とされた。


───なんともあっさりとした結末だ。

俺は振り抜いた刀に付いた血を払いさやに収めた。

サタナエルの動く事の無くなった胴体が無情にも倒れて血を流し広がって雪化粧が真紅に染まっていく。

………やはり命を奪うのはいい気はしない、首を斬った嫌な感触だけが手にこびりつく。

「ガァァアアァァァァッ!!!」

「!?」


怨嗟そのものが雄叫びを上げているかと錯覚するほどに負の感情に満ち溢れた声。

その主に視線を向けた。

今し方切り落としたサタナエルの首、それが宙に浮かび血を流して俺を睨む。

しつこいな!!首を斬ってもなお生きているのか!?

「ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ッ゛!!」

口が裂けるほどに開き獣の如く向かってくるサタナエルの首に俺は刀に手を掛けて再び抜刀しようとしたその時だった。


「そこまでだ。」

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