第五十七録:身の程を知れ 三節「堕天使は空を舞えない」
「グッ!?クソがッ!!」
悪態をつくサタナエルは苛立ちを抑える事ができない、それは奴のハルバートから伝わる。
攻撃が荒い、力任せに俺を潰すことしか考えていない。
……アブソリュート・グレイシャルの時と同じで焦っている、再生は阻害されあの檻を再展開するほどの魔力もうない。
あればとっくに魔法を発動しているはずだ。
本来の姿に戻るという荒技での回復はもう使えない、今回ばかりは後がない。
奴もそれがわかっていて後先考えないほどに過剰強化をして俺を近づけないようにしている…奴はウトリの言葉を鵜呑みにしている、時間を稼げば自身の有利な状況になるだろうと。
浅はかだ、敵である俺たちの言葉に縋るか。
(〜ッ!!こんな所でッ!こんな所で終わるわけにはいかない!!まだ!まだ始まってもいない!!あの神を!傲慢で浅慮で怠惰でッ!!あの神への復讐がッ!!!)
「アァァァアァァッ!!」
「う、おっ!!」
サタナエルは足場である家屋を砕いた、一撃にして崩壊する家屋に俺は瓦礫と共に地面へ着地するが奴はその翼を広げて空へ滞空、魔法陣を展開して俺へ向ける。
「もういいッ!!塵すら残さん!!」
(あの弓兵の矢が来るだろうが防御魔法と攻撃魔法に集中すれば問題はない!)
魔法陣から光の雨が降り注ぐ、
制空圏からの絨毯爆撃か!まずいな…俺もかなりのダメージを負わされている。
長時間耐えるのは厳しい、が、俺には夜天羅がいる。
刀を構えて光の着弾に備えた、次の瞬間。
轟音が鳴り響き一帯を光が破壊してゆく、絶え間ない眩い凶光を俺は刀で迎え撃つ。
防御、弾く、避ける、隠れる、あらゆる回避行動に神経を集中させる。
「痛っ…!」
数の暴力、無数に降る光を避け切ることは流石に難しい。
いくらか魔法を受けてしまうがこの際だ、致命傷以外は無視だ。
それに…サタナエルのこの攻撃ももうすぐ終わるだろう、夜天羅の手によって。
「は?」
サタナエルの気が抜けた様な声と共に攻撃が止む、俺は見上げて奴を確認する。
そこには呆気に取られて固まっているサタナエルがいた。
奴がそんな反応をするのも無理はない、自身の片翼が撃ち抜かれ消し飛んだのだから。
(矢!?魔法防御を突破したのか!?ただの鉄の矢がか!!)
夜天羅の音速を超えた矢の第二射がサタナエルに向かって飛来する。
(避け────ッ!!?!)
夜天羅の矢に合わせて俺は瓦礫を奴に向かい投擲、サタナエルの回避を事前に潰してやった。
「〜〜ッ!ガァッ!!」
二射目も翼を打ち抜きサタナエルの滞空は不安定になりゆらゆらと高度を下げて地面へ落ちていく。
俺はその墜落場所を予測して走り出す…そろそろこの戦いを終わらせるために。
再び…壊縁を取り出して左手に忍ばせる。




