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異世界帰還録  作者: 夜縹 空継
第四章:オーザンガール編
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余談「食への執念」後編

──察するに…その異邦者は元農家でかつ農業が好きだったのだろうそれも難しければ燃えるタイプの人だ、でなければ極寒の大地で農業をしようとは思わない。

同じ状況なら俺は交易なんかに力を入れるかもしれない。

「村人は止めました、この大地ではよっぽどの植物でないと育たないと…しかし旅人はこう答えました"ここの土は力に満ち溢れている"と。」


「村人は驚いたと同時に旅人から満ち溢れた自信を感じて信じることにしました、それから途方もない苦労を重ねに重ねて…行く年も行く年もを跨いだある日。村人が諦めかけたその時です、遂に芽が出たのです。」

「ほー…執念じゃなぁ」

「凄いな」

いつの時代の異邦者かは定かじゃないがあらゆる農法に加えて魔術や魔力を取り入れて苦心し諦めず努力した結果、希望を掴んだ。


「えぇ…尊敬致します、それから旅人は村人たちに農業の全てを教えました。その結果…」

シルビアさんは部屋のカーテンまで近づいてカーテンを開けた。

「この冬の大地であるルミナスは他に負けない農業地帯を作り上げたのです。」

カーテンを開けた先は街の反対側、そこには広い透明の布で覆われたハウスがありうっすらと雪が積もっている。

そのハウスの中には植物が育っていた、遠目で見ても中の植物が青々と立派に成長している。


「旅人は実った作物…このルミナスビーンを使用して最初に作ったのがビーンズサンドでございます」

「…のう、シルビアどの。その旅人の名はなんと?」

そこだな…名前がそれっぽいなら異邦者が日本人だと確定してもいい。

「旅人の名は…マサユキ・サトゥです、この町の英雄と言っても過言じゃありません。」


マサユキ…サトゥ…?………サトウか!!マサユキはどういった感じかは定かじゃないが苗字は多分、佐藤か左藤。

「あー…そっすね、多分俺の故郷の人間です、名前が故郷の特徴そのものです。」

「まぁ!!こんな偶然があるのですね」

「ですね」

自分の国は食にはかなりこだわりがあるほうだしなぁ…サトウさんはよほどどら焼きが好きだったんだろうな。

「そうじゃ!!シルビアどのこの菓子の…円形のやつはあるかの?」


夜天羅が身振り手振りでシルビアさんに伝えているのは大判焼き事だ。

…どら焼きがあるなら作っていてもおかしい事はないがどうだろうか?

「円形の…ですか?……あ!薄焼きの事ですね!」

パタパタと走って部屋を出て行ったシルビアさん、まさか本当にあるとは…サトウさんがこの町の菓子文化と農業文化をひっくり返している。


「あるんじゃ…」

夜天羅も話半分、冗談で言ったのがまさかの当たりで少し困惑気味だ。

ガチャリとドアを開けたのはシルビアさん、その手に持つ皿には円形の茶色の物体。

「このお菓子はいわゆる家庭の味でして…ビーンズサンドに比べて小麦粉が少量で型に入れて焼くだけなので子供のオヤツなどによく作ります、家庭に一台は専用の調理器具がありますね。」


そんな大阪のたこ焼き機みたいな…と思ったが器具さえあれば簡単にできるわけか、そりゃ重宝するわけだ。

俺と夜天羅は持ってきてくれた大判焼きを食べてみる、ビーンズサンドと材料はほとんど同じだが比率が違う、この薄焼きの方が断然中身のあんが多い。

「なんでしょう…私は今、嬉しく思います。」

シルビアさんがそう言って俺たちの方へ視線を向けて微笑む。


「あの旅人と同じ故郷の方に再び助けて頂くのは縁を感じて嬉しいです。」

「俺も運命的な物を感じてます」

「うむ、過去の縁とお主らがその過去を現在まで大事にしておったからこそワシらを引き寄せたんじゃよ」

確かにな…何かが違っていれば俺とルーディルさんは出会うこともなかったしアブソリュート・グレイシャルのことも知らずにこの町を去っていただろう。


「ふふ、ありがとうございます、そして…改めてよろしくお願いします。」

シルビアさんは俺たちへ深々と頭を下げる、その真摯な気持ちがこれ以上ないくらい伝わってくる。

「任せてください」

「うむ!大船に乗ったつもりでいいのじゃ!」

こうして…どら焼きの謎が解けたと同時に魔物を必ず倒すと決意を新たにした。

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