第五十六録:信じる者たち 四節「虎視眈々と。」
「うーむ…あれは入れんのう」
レーヴァテインで上空から町に入ってすぐの事だ、魔法の檻を前にして歩みを止める。
この檻の中に入ることができない、というよりは入ることはできるが入れば最後。
瘴気に侵され死に至るだろう…それはわしの邪気より強力だ。
「ど、どうしよう!」
「いや!それよりこの瘴気の中、ヨリツグさんは大丈夫なの!?」
ウトリとクラリアは踏み込むことのできない状況に焦りを見せるが中の旦那様の心配をしてくれた。
「大丈夫じゃ、旦那様には解魔ノ瞳があるからのう…すぐにどうこうはないのじゃ」
「解魔ノ瞳?魔眼ですか!?」
「うむ!」
とはいえ…これだけ濃い瘴気となれば解魔ノ瞳といえど限界があるだろう。
敵の位置は分かる、矢で援護をしたい所ではあるが…増援がいると分かればウトリとクラリアの作戦に支障が出るかもしれん。
いや……役に立たないと思わせれば注意を逸せるやもしれない。
わしはいつもの鉄矢ではなく一応持っていた狩猟用の木の矢を数本取り出す。
「ヤテンラさん?それは何を?」
「んー?旦那様への合図みたいなもんじゃ」
木の矢の一つ、その後ろあたりにナイフで文字を刻む、魔法のせいか彼方ノ鏡が機能しない状況でこれが唯一意思を伝えれる方法。
矢を構えて旦那様と魔物が戦っている辺り…旦那様の近くに落ちる様に計算して矢を放つ。
文字を刻んでいない木の矢も取り出した分を敵に当たらない所や届かない場所へ適当ばら撒く。
「す、すごい…ここから矢を放っていちがわかるんですね!」
「旦那様の位置を間違えはせんからな!わしの矢は百発百中じゃ!」
「…私たちはどうすれば?」
「待ちじゃな、旦那様がこの魔法を解除したと同時に動き出すのじゃ」
────依然と追いかけながらサタナエルとの戦闘が続く、現状…解魔ノ瞳が限界を迎えそうな俺が不利で有利なのはサタナエルだが奴は酷く警戒をしている。
それは俺の刀、正体不明の黒い霧にだ。
突然発生した黒い霧に俺も困惑している、俺もサタナエルもこれがどういう能力なのかわからない。
そんな中、サタナエルは攻撃をするでもない黒い霧を不気味に思い酷く警戒している。
(クソ!あの黒い霧がどんな能力かわからない!?ただでさえ奴は魔法を解体する魔眼持ち!!アレが同じ様な効果なら致命傷を受けるのは私だ、どうにか奴から刀を奪わなければ!!)
刀とハルバートが激しくぶつかり合う最中、飛来するもがあった。
ヒュン……俺の近くに木の矢が飛んできて地面に突き刺さる。
「ッ!?増援だと!?」
矢を見たサタナエルは俺との戦闘をやめてすぐさま距離を取った。
第一射から次々と木の矢が着弾するがおかしい…夜天羅の援護であるのは確かだが彼女が使うのは鉄矢だ。
それに夜天羅なら矢をこんな外すことなんてあり得ない、何か意図があるはずだ。
「……?…!!」
一射目の矢を見て俺は夜天羅の意図を瞬時に理解した。
現状…やる事は変わらない、この檻の破壊。
だがその後が大きく変わる。




