第五十六録:信じる者たち 一節「成長」
「よし…みな無事じゃな!」
レーヴァテインからルーディルどのたちを乗せた荷台を地面にゆっくりと降ろす。
旦那様と別れドロシーとわしがここ、避難先である新しい街ノウス・ルナミス。
今、旦那様が戦っている旧町の方からレーヴァテインで1時間ほど離れた場所に位置する。
「うわッ!?」
ルーディル姉妹が驚き声をあげた、2人して指差す先は旧町の方角だった。
「あれは…なんじゃ…?籠?」
遠くからでも分かるほど巨大な檻な様な籠が現れた…十中八九、敵である魔物の仕業。
旦那様なら負けるなんて事はないだろう、しかし体を張り傷だらけになる愛する人なんて見たくない。
「こちらもう大丈夫です!ヤテンラさんはヨリツグさんのもとへ!」
「うむ!」
アレックスどのは事態を把握しわしの心情を察して声を掛けてくれる。
レーヴァテインの操縦桿を握り出発しようとしたその時、待ったの声がかかる。
「待って!私たちも連れて行ってください!!」
2人分の重なる声に視線が集まる…ルーディル姉妹がレーヴァテインの近くまで来た。
「な、何を言っているんだアトリ!クラリア!私たちでは戦いに…いや!それ以前に魔力がもうない、足手まとい以下になる!気持ちはわかるがここは彼らを信じて任せよう!!」
すぐさまアレックスどのから叱咤の声が上がる、娘の気持ちを汲みつつ自分たちではどうにもならない現状、一番悔しいのはアレックスどのだろう。
「魔力は大丈夫!コレを使うから!」
そう言ってウトリが取り出したのは液体が入った小瓶だった、わしにはその正体がわからないものだがそれを見たアレックスどのの表情が驚きに変わる。
「!?それは!マジックエリクサー!?どこでそんなものを!!」
「準備をしていたのはお父さんだけじゃないの!!」
「私たちが近接格闘で加勢なんてしないよ!悔しいけど……足手まといなのは自覚してる!!」
「……それならおぬしらはどうするつもりじゃ?」
2人の回答次第では連れてゆくのもありだ、旦那様が有利に戦えるならそれに越した事はない。
「私たちは奇襲をします、一度限り…一秒ならヨリツグさんに並ぶことができます!そこで────」
二人から語られる奇襲の内容に誰も異を唱える者はいなかった、事前に見た二人の実力ならできると確信したからだ。
「それに!!もう一発!!一撃を加えないと私たちの怒りが治らない!!」
二人、声を揃えて声高々にそう宣言した。
わしを見る目には強い意志と熱意が伝わってくる。
「……私情かの?」
「もちろん!!」
変わらず息の合わさった返答、わしは二人の意思を聞き口角が上がる。
「気に入ったのじゃ!さぁ早く乗るんじゃ!」
「はい!!」
気持ちのいい返事が返ってくると同時に二人はレーヴァテインへ乗り跨る。
「じゃあ行ってくるねおとーさん!みんな!」
「ッ!ウトリ!クラリア!…二人を頼みます!ヤテンラさん!!」
「任せるのじゃ!」
「そんな心配しないでよお父さん、ちゃんとお父さんの分もみんなの分もかまして帰ってくるから!!」
二人は笑顔で自信満々に凱旋の予定を告げた、わしはレーヴァテインを浮かしそのまま操縦桿を操り空へと飛ばした。
───「行きましたね…アレックスさん」
「あぁ…行ったな」
空を見上げてそう呟くオーダイル、私も同じく空を見て娘たちを見送った。
レーヴァテインと呼ばれるゴーレムはすぐに空へ消えていき見えなくなる。
「早いですね、若い子の成長と言うのは。」
ムルが隣でメガネの手入れをしつつ私に声をかける、彼は娘2人を幼少から指導をしてくれていた。
「本当に早いよ、少し前まで手を引いて歩いていたと言うのに」
今では私の手を引く事すらある、自立していき手の距離が空いていく寂しさが募る一方で自分の意思で自由に堂々と振る舞う娘を見て何にも変え難い充足感を覚えている。
「頼むぞ…!」




