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異世界帰還録  作者: 夜縹 空継
第四章:オーザンガール編
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第五十五録:敵対する者 三節「最悪の予想外。」

最悪と、呼ばざる得ない。

目の前にいるのはあの有名な地獄の最下層、裏切りの氷獄コキュートスの主。

奴が本当にサタナエルかどうかの事実は確認ができない…だが相対してるサタナエルにはそう思わせるだけの風格があった。

アブソリュート・グレイシャルの時とまるで違う…見た目から言葉遣いから変わっている、唯一変わらないのは見た目とは裏腹な醜悪な性根。


「あ、安心したまえ君への恨みは忘れていないし殺した後はあのルーディル一味と町の住人も殺す」

爽やかな笑顔を浮かべ、よく通る聞きやすい声からはドス黒い激情と殺意を隠しもしない。

「問答は終わりかな?て、言っても喋っていたのは私ばかりじゃないか!まぁ…いいか、じゃ殺すよ」

有頂天、元の姿に戻り開放感を得ているのか先ほどからサタナエルはよく喋る…だがどうやらそれも終わりらしい。


まるでこの距離が俺の寿命と言わんばかりにゆっくりと…悠然と距離を詰めるサタナエル。

その手には槍…あの三叉槍とは違い凶々しいハルバートを手にして振り回し弄ぶ。

少し…手が震える、サタナエルという脅威に怯えているからじゃない。

俺は今まで魔物はもちろん堕天使に悪魔…ゴーレムや人とも戦ってきた。


中には人に近い者も殺めてきた…その都度、心にはいい知れぬ気持ちと忌避感を抱えてきた。

目の前のサタナエルはほぼ完璧に人…初めて人との殺し合いをする。

そんな忌避感を抱えるもサタナエルに対しての同情は一切ない、コイツがどれだけの人を殺め、アレックスを…その一族を苦しめてきた事か。

サタナエルは俺の刀の射程範囲で足を止めた。


へらへらと薄ら笑い浮かべ挑発する様にまるでわざと俺に先手を取らせるように手を広げた。

何を考えているかわからない。

先手を取られたとしても自分の方が強いと示したいのか?それとも…先に攻撃を受けると何か有利になるのか?

(考えていますね、私がどう言った戦法を取るか未知数…だがこいつは必ず攻撃を加えてくる、さぁ!全て跳ね返してあげますよ!!)


…サタナエルが俺より強ければそこまでだ、さうだったなら俺は夜天羅たちが到着するまで時間を稼ぐその後は総力戦だ。

変な小細工なら有利なのはこっち…まぁ結局は出たとこ勝負だ、ただコイツのゲスな性格から一撃で俺を殺すことはしないだろう、必ず痛めつける。

俺は警戒をしつつも刀を振り上げ、右袈裟斬りを繰り出す。


過度な集中をしている今、あらゆる動きスローモーションの様に見えて感じる。

動かない、もうすぐ刀がサタナエルの右鎖骨あたりに触れようとも動かない。

全てが遅い世界でもその不気味な薄ら笑いは変わらない、それどころかより嬉しそうにすら見える。

そして…ついに俺の刀がサタナエルを斬った。

感触は確かにある肉も骨も斬った、完全に致命傷のはず、なのに…どうして!


「!?」

「!?」

互いに混乱する、俺は斬ったはずのサタナエルが何のダメージもない事にだ。

逆に何故サタナエルが同じく混乱しているのか…その詳細はわからないただ、奴の身にも予想外が起きている。

(なにが起きた!?私のドロール・プロディティオが発動していない!?いや!違う!!発動はしている、コイツに作用していない!!?)


「?」

違和感、サタナエルを袈裟斬りにしたのと同じ部分に微かな違和感を感じる…解魔ノ瞳が即分解したためほんの一瞬しか感じ取ることしかできなかった。

魔法の類だろう、詳細を掴む事ができないがまぁ別に───


未だ混乱の最中のサタナエルに対して俺は刀を振るう、奴の小細工の詳細はよく分からないが少なくとも俺には通用しないそれだけ分かれば十分。

「ッ!!」

サタナエルは俺の横なぎをハルバートでガード、鉄が激しくぶつかり火花を散らす鍔迫り合い。


「どうした?笑顔が消えてるぞ」

「人間風情がッ!!」

薄ら笑いが消えて眉間に皺を寄せ怒りを顕にするサタナエルは力強くハルバートを振るう。

半身で躱すとハルバートと衝突した地面の氷が砕け散る…武器の性能と膂力の向上が凄まじい、パワーは互角か奴がやや上ぐらいだが近接戦闘の技術では俺が上だ。

(魔眼かッ!?奴の魔眼のせいで私のドロール・プロディティオが効かないのか!?一体何の魔眼だと言うのだ!!)

「ッ!!」

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