第五録:段取り 二節「問題点」
「フ、ファスさん!?」
「ファスどのぉ…」
現れたのはこの村の兵士のファス昨日ぶりの再会である。
「…ギルド登録ですか?」
ファスさんは疑問を投げかけてくる、その表情は少し訝しい顔、恐らく…出会った格好から俺たちは異質だったことに気が付き異邦人とわかっているためだろう。
なら、いっそ…
「ファスさん、ちょっとご相談が─」
俺はファスさんと受付嬢さんにここまでの経緯を話した…もちろん邪気の事は話さずに枢機卿から逃げたこともぼかした。
「─てことで身分証明書がないんですが…」
「ふむ…まずお二人が異邦人というのは信用致します。」
自分で言っておいてだがあっさりと信用してくれたこれも国王の演説のおかげだろう。
「異邦人だとするとヤテンラさんが一緒にいる事に納得がいきます。」
「そうですね、私も同意です」
魔族と人いるのがこの世界では珍事で特殊な事情のほうが理由としては納得されやすいかもしれない。
「事情は理解しましたが…そうなると私の様な一介の兵士ではどうしようも」
「私もご協力したい気持ちがありますが…」
二人の真摯な気持ちが伝わってきた俺たちも申し訳ない気持ちになる。
「そう…ですよね…」
「のじゃ…」
2人で頭を抱える。
ファスさんと受付嬢さんの言う事は確かだ…申し訳ない相談をしてしまった、何か考えていた受付嬢さんが口を開いた。
「……ルスティアに行くだけなら方法が無いこともありませんよ」
受付嬢さんの発言に皆の視線が行く。
「簡単なお話です、ギルドを介さなければ良いのです」
衝撃的な発言、ギルド職員にあるまじき発言だこんな提案を職員がしていい訳がない。
「それは…その、よろしくない事では?」
恐る恐る受付嬢さんへ尋ねたファスさんも渋い顔をしている
「そうですね他の方ならこの様な提案はしません、ですがウルシヴを討伐したお二人なら一度の例外くらいなら通るかと」
予想以上に倒した功績が大きい、ありがたいがこの提案にはデメリットがある
それは─
「しかし…この案はルスティアに行くまでしか使えません、もし焦る事がないなら乗合馬車の予約をした方がよろしいかと」
受付嬢さんの言う通りこれはルスティアに行くまでしか使えないルスティアに着いたら振り出し、今ある資金が尽きればおしまいだ。
「ちなみに聞きたいんじゃが馬車の予約が今どんなものか知っておるか?」
「そうですね…掲示板を拝見した時は1ヶ月待ちだと…詳しくは乗合馬車の駅へ行かれるほうが確実かと」
一ヶ月!それも今の段階でだ、だとしたらさらに増えているに違いない、さすがに一ヶ月以上は足止めの許容範囲を超えている、これは…悩むな、どうしたもんか。
城に戻るのが手っ取り早い…あの枢機卿がいなければすぐに行動していたが…
「どうしようか?」
隣の夜天羅に問いかける、独りよがりに決めるのは良くはない彼女に意見を聞いてみる。
「うーん…難しいのう」
二人して悩んでいると一人の兵士が慌てた様子でファスに近づいてきて耳打ちをした。
「!!!?」
目を開き心底驚いた様子を見せる何か問題があったのだろうか…?
「すみません!急用ができてしまいました!
今回の件はご協力させて頂きますのでまたカルステ家へ訪問致します!では」
そう言うと足早にギルドから去っていく残された俺と夜天羅は顔を見合わせた。
にゃう?
不思議そうにこちらを見るコイスケ、とりあえず…これ以上ここにいては迷惑になる。
「すみません…ありがとうございました、一度考えて出直します。」
「いえ…こちらもご協力できず歯がゆい気持ちです」
互いに頭を下げ、俺たちはその後すぐにギルドの扉へ向かう。
「ん?」
入り口前にあるパンフレットスタンドらしきものが目に入る、その中の一部を取りギルドを後にし俺たちは人の邪魔にならない建物の壁側で一息をついた。
「お前様、ひとまず他の用を済ますかの?」
夜天羅が少し不安そうな表情を浮かべつつもこれからの行動の提案をする。
「そうだな…先に駅に行ってみよう、それから必要なものを買いに行こうか」
現状、すぐに決断はできない、なら他の用事を済ませてから改めて考えよう。
「じゃな…わしらにも考える時間が必要じゃ」
夜天羅も概ね俺と同じ考えだ。
にゃん!にゃにゃ!!
コイスケはまるで俺たちを励ましてくれる様に俺と夜天羅の足にすりすりと体を寄せてくれる、とりあえず抱き上げて二人で撫でまわすゴロゴロと機嫌よく喉を鳴らした。
その様子を見ていると心が安らぎ前向きな気持ちになっていく、夜天羅と顔を見合わせて互いに微笑みつつ足を進めた。
俺はギルドで取ったのはこの村のガイドマップ、パンフレットに従い乗合馬車の駅に向かうここから徒歩で十二分…二人で談笑しつつ歩いてゆく話しているとあっという間に駅に着いた。
ガヤガヤと騒がしい喧騒で案の定、混雑している状況で職員も忙しく動き回っていた俺たちは近くの掲示板に目をやるそこに書かれていたのは─
「三ヶ月待ちなのじゃ…」
「…やーばいな」
にゃうぅ…
ギルドの受付嬢さんが見た時の倍以上の日数、これは本格的に受付嬢さんの提案に乗る可能性が出てきた言わずとも俺たちの意見は一致していた、駅を後にして武具店を目指し逆戻りになる為踵を返して目的の店へ。




