第五録:段取り 三節「手慣れたもの」
着いた店"ランダナズ・ウェポン"この村で唯一の武具店。
「ごめんな、コイスケちょっとだけ待っててくれ」
「すまんのう」
にゃん!んにゃん!
今まで大人しく抱っこされていたコイスケは一声鳴いた後に腕から飛び降りて大きく伸びをしてから立て看板の隣に丸くなった。
俺たちは扉を開けて入っていくと入店を知らせるドアベルが短く響く。
「!!いらっしゃい…」
カウンターにいる屈強な店主が驚き、こちらを二度見したやはり夜天羅を見て…この反応も見慣れたしかし好奇の目に晒される彼女の事が心配だ今のところは特に問題なさそうにしているが…。
店内は広く様々な武器や道具が陳列されている俺と夜天羅は扱う武器が違う、俺は刀を夜天羅は和弓を扱う店内で分かれて互いの武器の区画を物色。
剣のコーナーはやはりと言うべきか…西洋剣がずらりと並んでいた、とりあえず刀と形が似ている片刃のサーベルを手にする。
店内で許可なく抜刀はできないが…似て非なるとはこの事だ、鞘を加味しても持った時点で重い、それは別に問題ではないが一番の問題はサーベルは片手が基本という事だから持ち手が短い、両手で構えるのは無理だ…これがサーベル軍刀ならまだよかったが結局はあれも刀身が日本刀だ。
「すみません」
「…はい」
カウンターのぶっきらぼうな店主は短く答えるいかにも頑固な職人といった感じ。
「感触を確かめたいので剣を抜いても?」
「…どうぞ」
店主から許可が降り手に持ったサーベルを静かに抜刀、重さは刀より重たいが問題なし…試しに正眼の構えを取る…やはり片手での操刀が難しい不安定、それに片手で構える違和感。
サーベルを鞘に戻して元の場所へ戻した。
「ありがとうございます」
「……」
ちらりと店主の方を見た、返事は返ってこなかった…冷やかしと思われたのだろうか。
視線を剣に戻して再び選ぼうとしたが、違和感を感じた、正確には店主の後ろに飾っているいくつかの剣…再度、店主がいるカウンターを見た俺は驚き足早にカウンターに向かう。
そこには────刀が飾っていた。
鞘に入ったそれは最初見た時はサーベルかと思ったが間近で見ると紛うことなき刀。
「…お客さん」
店主の静かなしかし厳かな声が聞こえてハッとした俺は慌ててカウンターから少し離れた、そして店主に問う。
「すみません、カウンターの後ろに飾っている下から二番目の剣は売り物ですか?」
飾っている事から非売品の可能性が高い俺は売り物だと一縷の望みを賭ける。
「……どうしてだ?」
「え?」
返答の意図が分からず思わず聞き返したすると店主はもう一度聞いてくる。
「どうしてこれがいいんだ?」
「俺がよく使っていた剣だからです」
店主は物珍しさに俺がこの剣が欲しい様に見えたんだろう、厳しい視線が俺を突き刺す。
「おやー?お前様どうしたんじゃ?」
俺と店主のやり取り察して自分の武器を見ていた夜天羅がこちらに来た、その手には大弓が一張握られていた。
「これは…刀じゃな!この世界にあるなんてのう驚きじゃ」
店主は俺たち二人を注意深く観察した後飾っていた刀を手に取ると。
「…ついてきな」
そう言うとカウンターを出て店内にある扉を開けて入っていく俺たちはそれに続く、入った先は広い部屋、下は土だが屋根があり小学校の体育館ほどのサイズ。
見渡すとカカシや藁かなにかを束ねた試し切り用の的に弓の的など様々な物が鎮座していた、夜天羅と俺はぐるりと辺りを見渡す。
「ほー…訓練所の様な場所じゃなー」
「…ここは武器の試し場、その弓も試してみるといい」
「では遠慮なくやらせてもらうのじゃ」
俺たちは的がある場所まで移動した的との距離はだいたい二十メートル。
和弓とは違う大弓は夜天羅にとって違和感があるだろう…彼女は軽く構え弦の確認をしたあとに一呼吸、近くにあった試射用の矢を手に取る。
改めて構え弦に矢を付けて弦を引く、キリキリと張り詰めた音がした───刹那、限界まで引かれた弦が解放され矢が放たれると矢は吸い込まれる様に正確に的の中心を射抜いた。
ふっと息を吐きリラックスをし力を抜く夜天羅。
「慣れない弓じゃが、これはいい弓じゃのう」
「夜天羅の腕がいいんだよ」
「…これはすごいな」
「そ、そうかのう」
俺と店主に褒められて少し照れ気味なる、店主は夜天羅から視線を外し俺のほうを向き刀を差し出した。
「…君も、試すといい…それで決める」
刀を扱えるかどうかで売るかを決めるわけかある種の挑発でもある…だが俺からすれば好都合な事この上ない、刀を受け取り俺は店主の誘いに迷わず乗った。
ずしりと重いそれは、分類はおそらく野太刀、鞘に納められた刀身は1メートル弱
で柄を合わせれば一メートル四〇センチになる。
鍔は美濃鍔と呼ばれる丸みのある正方形で黒い簡素なもの、柄と柄巻は群青色。
猿手はなく兜金の後ろには編まれた紐が付いていて鞘はシンプルな作りをしており派手な装飾はない、色は艶やかな深い群青色それに映える金色の足金物、帯取りが付いていた。
俺は太刀緒を腰に巻き刃を下にして吊り下げるいわゆる表佩という帯刀方法。
腰にはいつもの安心感がある慣れ親しんだ重さ、体格のでかい俺にはちょうどいい大きさの刀…準備を整えて巻藁の前に立つ。
静かに息を吐きそっと柄を握り静かに鞘から刃を滑らす、現れた刀身は反りが野太刀にしては浅く通常の刀より幅が広く厚みもある。
ただただ美しくなめらかな刀身、焼き刻まれた刃文は規則正しく波打っていた。
刀の全てがこれが名刀だと物語っている。
両手で刀を握り、正眼に構えゆっくりと振り上げ上段で止めた、息を整え脱力していた腕に力を込めて袈裟斬りにする。
スッ…と刃は巻藁を貫通、しかし巻藁は切れたものの切れた上部は乗ったままだ。
「!!!」
「おー!綺麗に切ったのうお前様!」
夜天羅は拍手を店主は驚愕しており信じられないのか巻藁に近づき上部を触る、するとバランスを崩した巻藁はぼとりと地面に落下。
「…驚いた…良いものを見せてもらった」
店主は俺に手を差し出した




