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異世界帰還録  作者: 夜縹 空継
第一章:旅立ち
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第三録:仮初 一節「一夜の逃避行」

夜の森を疾走する縁嗣は城から距離取るために奥へ奥へ進んでいく

本来なら未知の土地、それも森の奥へ行く常人なら決してしない選択。

「ハァ!ハァ!かなり走ってきたな!」

「お前様は凄いのう…わしを抱えてこんな走るなんて」

「まぁな!一旦止まるぜ」

足を止めて肩で息をしつつ城の方向に視線を向けるかなりの

距離を全力疾走したのか城はとうに見えなくなっていた。

どうやら追手は来ていないらしい。

…多分だがゴルドーさんが手を打ってくれたと思う

最後に見た時の彼の顔に敵意は見られなかったし

夜天羅を見てもそれは変わらなかった。


「お前様、さすがにしんどいじゃろ?降りるぞ?」

お姫様抱っこの状態で俺を心配そうに見ている夜天羅

心配してくれるは嬉しい、しかしまだまだ余裕があるのは事実。

「大丈夫、それに夜天羅裸足じゃないか」

…相当、急いで俺を探してきてくれたんだろう

私服だけの着のみ着たままだ他に何も持ってきてない…

靴すら履かずに飛び出して来たのが容易にわかる。

「おお!?」

突如、夜天羅が素っ頓狂な声を上げる。

その異変は自分にも感じ取れた

夜天羅の服の中がなにやらゴソゴソしていた

その物体が服の胸元から顔を覗かせる。


にゃあ

「コイスケ!?」

二人して驚く、いやまて夜天羅が知らないのはおかしくない!?

「夜天羅が連れて来たんじゃないのか?」

「わ、わしも知らなんだ、なぜ気が付かなかったんじゃ?」

猫は軟体動物なんて言われるがどうなってんだ?

夜天羅の胸元から地面に静かに降りて伸びをした

その後で鼻と耳を動かして辺りをキョロキョロとする。

にゃあ、にゃー

自分に付いてこいと言わんばかりに俺たちの数歩前にでて後ろを振り返る。


「…付いてこいって言ってるみたいだな」

「あてもないし着いていくかの?」

「だな…」

突如現れた愛猫を信じて着いていく事にした

コイスケの後を追う、まるでおとぎ話でありそうな展開だ。

しばらく森を進んで行くとまばらに木がある場所に着いた

木が生い茂ってないので月明りで辺りが少し明るく見渡すと

少し奥に何かあるコイスケはその何かに向かっていく。


「コイツは…でかしたコイスケ!」

「なんと…凄い猫じゃこの子は!」

奥にあったのは小屋だった雑多に置かれた木製のバケツや

その他の朽ちた道具、まさに寂れ打ち捨てられた古い小屋。

今すぐコイスケを撫で回したいが先に小屋へ入る事に、俺は両腕が塞がっている

夜天羅にドアを開けてもらう、幸いな事に鍵などはなく簡単に開いた。

扉の蝶番は錆びつき歪な音を立てる。


中は埃臭く、空気が澱んでいた、家具はあまりなく棚に机と椅子あとは雑に

木材を組み合わせたベッドに薄いブランケットがあるのみだが野宿を

するよりは断然いい、陽光も防げる。

不法侵入だが緊急時だ大目に見てもらおう。

とりあえずは一息つける状態にしようと夜天羅を

腕から下ろして窓を開けて換気、夜の清涼で新鮮な空気が室内に入ってくる。

「ここまでありがとうなのじゃお前さま」

「どういたしまして、コイスケもありがとうな」

俺の足元にいたコイスケを二人で

撫でくりまわす上機嫌でゴロゴロと喉を震わせ目を細めていた

名残惜しいが撫でる手を止め次の行動に移る。


「これを使える様にしてくる。」

「ならわしは部屋を物色しておくかのう」

互いに動き出し俺はブランケットを持ち外にでて叩いたり

上下に振りできるだけ埃っぽさを取り除く、これで少しはマシになるだろう。

ブランケットを手に持ち、小屋の中に戻ると

夜天羅はベッドの縁に座り膝にコイスケを乗せて待っていた。

「棚に布切れがあったのでなベッドだけでも乾拭きして使える様にしたのじゃ

 あとは棚の中に使いさしの蝋燭が少しと硝子の水呑が

 一つあったのじゃ蝋燭をつけるかの?」

「…いや、()()()()()()()()()()()()


夜天羅の隣に座り自分と夜天羅をブランケットで包む

肌寒い今の気温にはちょうど良い。

夜天羅は身を寄せピッタリとくっつき腕を絡める

俺は絡められた夜天羅の手に手を置いた。

「…今日はもう休もうお互い疲れているだろう、精神的にも肉体的にも」

夜天羅に聞きたいことはある、なぜ来れたのか?邪気はどうなっているのか?

…それに両親の事も気になる。


邪気の広がるスピードが緩やかなのは不幸中の幸いだ

今日寝るくらないなら被害は出ない…明日、朝一に話し合いをしよう。

「そう…じゃな、お前様」

夜天羅に呼ばれ彼女の方を見る、唐突にキスをされた。

俺の腕に絡めていた手を離し体を強く抱きしめて夜天羅が

満足するまで長いキス、俺はそれを受け止めた。

どれほど時間が経ったのか、夜天羅は静かに唇を離した

彼女は不安だったんだろう、俺という存在を確かめたかった。

その思いは俺も同じ、こんな世界に連れて来られて一番心配したのは夜天羅の事

だから王様から帰還の話を聞いた時は焦ったし本当にどうしようかと思った。


しかし今は違う、夜天羅がいる

これから色々と困難なことがあるだろうけど

二人なら、いやコイスケも合わせた皆でなら乗り越えていける。

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