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取り戻すために 8



店に着くと、まだナナたちは出てきていないようだった。


部屋に乗り込むのを躊躇っていると、漸くして2人が出てきた。


——2人して、赤い眸。

ナナは更に、顔も赤い。


でも……手は、しっかり繋がれていた。



そうか、うまく纏まったのね。



「アルバート」


エドウィン様が声をかけると、こちらに気がついたアルバート様は、手を繋いだまま深々と頭を下げた。


「お陰様で、未来が見えました。

ありがとうございます」


ナナも、慌てて頭を下げる。

その口元は、幸せそうに笑みを刻んで。


……まぁ、いいか。ナナが幸せなら、ミクにデレデレしたアルバート様は忘れてやろう。


残念ながら、エドウィンは卒業後だったので、ミクにデレデレしていたのは数えるほどしか見ていない。

ナナは毎日見ていたのに許せるなんて……凄いわ、尊敬する。



名残惜しそうな2人と分かれて、ナナと家に帰る。


着替えてサロンに行くと、ベルとアリー、カティが待ち構えていた。


3人とも心配してたもんね。


私のすぐ後にナナも入って来て、久しぶりに5人揃っての、小さなお茶会。


実は、何があってもナナをフォローするため、とっておきの紅茶とお菓子を用意してました!


「……で?」


ひとしきりお茶を飲み、お菓子を摘まんで。


皆ソワソワしだしたので、私が口火を切る。


「で、とは……」


もじもじと身体(からだ)をくねらせているナナが可愛いです。


「また婚約者に戻りますの?」


アリーが不審げに問う。

……ま、自然な反応だわね。

アレを見てるんだもの。



「…そう、なり、ます、かね……?」


はにかんだナナがレアだ。


「でも、ナナ、かなり怒ってらしたでしょう?


よくその決断に至りましたわね」


多分一番納得がいってないアリーが、更に問う。


私も不思議だし、自分に置き換えても無理だ。

私がエドウィンのことを保留にできるのは、実際目にする機会が少なかったから。


アレは無理だわー。



「…土下座されましたの」


——はい⁉︎あのアルバート様が⁉︎⁉︎

髪の毛一本から足の爪の先まで、『自尊心(プライド)』で出来ていそうな、あのアルバート様が⁉︎

そしてこの世界にもあったのか土下座‼︎


私が妙なことに衝撃を受けて黙っていると、ナナは更に説明した。


「土下座ののち、脚に縋り付かれましたの」


「「「「脚に‼︎縋り付くぅ⁉︎」」」」


皿のような目と、声を揃えて、私たち4人は仰け反った。


いやいや、それは覗いてはいけない、呪われし闇の深淵。


厨○的な表現を使う程衝撃を受けたということを、ご理解いただきたく。





———良かった、部屋に入らなくて。

私は心から安堵した。



「それで、流石に呆気に取られましてね。


『言い訳になるけど、私の状況を知って欲しい』と言われて、洗いざらいというか、色んな事件の中でアルバート様がどういう状況だったか、事細かに教えてもらいましたの。


——アルバート様も、自分の心の動きが不自然だと思って、かなり抵抗したそうですの。


でも、どんどん頭に靄がかかる感じで、判断力が落ちたところで、自分の意思に反して身体が動いたのだそうです」


スッと真面目な表情(かお)になって、ナナが続けた。


「意識的かどうか分かりませんが、『動作』まで本人の意思から外れてしまう、というのは、かなり不味い状況ですわね。


証人がいるわけですから、聖女様の状況は、かなり不利だと思われますわ」


成る程、それで『軟禁』ね。


「正直、私も恐ろしいと思いますし、『魅了』の能力(ギフト)とやらは、この世から消してしまうべきですわ」


そうね、本当にそう。

明日から、預かってる資料をひっくり返す決意をしていると、横から咳払いの音がした。


「皆さま、今はその話ではありませんでしょう?


ナナ、それでどうなったのですか⁉︎」


喰い気味に、ベルが話を戻す。

恋バナは、乙女の大好物だもんね。

他の3人も、頷きを返す。


「…ええと…、それから、昔から私のことを愛していて、婚約が整ってどんなに嬉しかったか、とか、結婚をどれだけ楽しみにしていたか、とか、もう洪水のように言葉を浴びせられて、ですね……」


「で、絆された挙句、押し流された、と」


私の結論に、ナナは赤くなって()を逸らした。


「で…でも、2度目は無いと言ってありますのよ……」


ナナは言い訳のように言う。私たちは、噴き出した。

私を含め、皆の()は生暖かく、口は『ナナ、チョロいな』という風に歪んでいるだろう。



——でもね。

その選択は、相手に真っ直ぐ向き合うナナらしくて。

アルバート様の言葉や態度、気持ちを、きっとそのまま全部しっかりと受け止めているからこそで。


それに。その横顔がね。

私は溜息とともに言葉を紡ぎ出す。


「うん、ナナが幸せなら、それでいい」


言いながら、私が前のめりだった体を深くソファに沈めると、皆もソファに座り直した。



皆、私と同じようなことを思ったのだと思う。

其々に、どこか満足気だ。


「違いますわ、メグ」


ナナだけが、姿勢を正して、決意を込めた声で言った。


「私、これから幸せに『なる』のですわ」




その声は、『もう幸せを他人に委ねない、自分の道は自分で歩く』という決意に満ちていて。


たまらず、私は立ち上がってナナの所に行き、その肩を抱き締めた。


「うん、幸せを『掴んで』、ナナ」



カティが、ベルが、アリーが。

次々と、ナナをハグする。



皆の()には、親友(とも)の幸せを願う、星のように綺麗な涙が光っていた———






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