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取り戻すために 6




——熱烈なプロポーズに、一瞬心が揺れる。



でも、何もなかったことに出来るほど、私の傷は浅くない。

少なくとも、魅了を跳ね除けて欲しいと思う程度には、私はエドウィン様に『想い』があったのだ。



何と答えようか迷っていると、先にエドウィン様が口を開いた。

その表情(かお)は、必死の懇願に強張って。


「いい返事が出来ないって、分かってるよ。


私のしたことが、どれだけ君を傷つけて、どれだけ私への信頼を失ったか分からないほど、想像力がない訳じゃない。


だから、君の信頼を回復するために努力をすることを、どうか認めて貰えないだろうか」


私の両手を取り、そこに額を押し付けて、エドウィン様は続けた。


「厚かましいのは分かってるけど、どうか、私に挽回する機会を貰えないだろうか」


——ミクのせいにしなかったことは、評価しておこう。

一応、エドウィン様も被害者だしね。

あれだけ精神的•肉体的に打ちひしがれていた訳だし、自らに罰も与えている。


だから——真剣な訴えに、応えてみようか。



「……わかりましたわ。幼馴染のよしみで、機会を差し上げます。


私は、具体的に何をすればよろしいの?」


ちょっと戯けて、私は答えた。

立ち直る兆しを見せている人を追い詰めるのも難だしね。


エドウィン様は、あからさまにホッとした様子で、私を見上げた。


「時々、会いに行かせて欲しい。

会わないと、何もできないから」


縋るような、()


「いいですわ、お会いします。

他にはありますか?」


「もし私に出来ることがあったら、何でも言ってくれ。


君のために、何かさせて欲しい。


何か、私にして欲しいことはない?」


…うーん、何か要求してあげた方が親切なんだろうけど。


「…今は特に思いつきませんわね。


あ、一つありますわ。

ちゃんと食事と睡眠を取るようにしてください」


エドウィン様は、ちょっと困ったような表情(かお)をした。


「君は…こんな時も、私のことなんだね…。


——わかった、約束する。


他にもどんどん要求してくれると有難いな」


苦笑するエドウィン様に、そうします、と言って微笑む。


すると、安心したように頬を緩めたエドウィン様は、私の左手を優しく取って、指先にキスを落とした。


久々のことに、真っ赤になっていると、更に髪を一房取って、そこにもキスを落とす。


「なっ…ウィンっ!」


「どれだけ君を愛しているか、私はアピールし続けるからね、愛しいレティ」


笑って、エドウィン様は言う。

あんまり嬉しそうだから、仕方ない人ねと許してしまう。


とりあえず、今はこのまま。

自分の気持ちに、向き合っていこう。



遅くなったので、今日は皇太子宮に一泊させてもらって、明日王国に戻ることにした。


私と接点を持つことで、エドウィン様は安定したとアルバート様から太鼓判を貰ったから、安心して戻ることができる。





で、だ。


もう一人心配な人も、この際ケアしておこう。


そう、アルバート様だ。




「アルバート様も、眠れてないですよね?」


この際だからと、魅了についての資料を借りる事にした私は、持って来てくれたアルバート様に問いかける。


アルバート様は苦笑して頷いた。


「マーガレット嬢に隠しても仕方ないですからね。

中々眠れないですね」


「それは何故ですか?

お仕事が忙しいと言っても、エドウィン様はよっぽどの事がないと残業させませんよね?」


アルバート様の苦笑が、痛みを堪えたものに変わる。


……やっぱり、か。


「イェーナ様との婚約、政略では無かったのですね?」


アルバート様は、少し驚いた表情(かお)をされたが、観念したように頷いた。


「イェーナ嬢の、はっきりした物言いが好きでした。その正義感も、行動力も心地よかった。


だから、彼女と結婚したいと両親に伝えて、婚約を整えてもらいました。


もう、許して貰えないでしょうが、私もエドウィン様に負けない程の想いがあります」


えっ、あの愛の重さでナナを想ってるの?


——諦めるなんて、無理なのでは?



「ナナと、話をしましたか?」


「いいえ、婚約者解消も、高等法院を通しましたし、全く機会を得られず。


私の行動の結果ですから、とても話し合って欲しいとは言えません」



儚く笑うアルバート様の横顔は、一眠りする前のエドウィン様のよう。



「来月、休みは取れますか?」


私は、思わず聞いていた。


取れます、と、少し希望を持ったようなアルバート様に、私は言った。


「一度だけ、私がお膳立ていたします。

今のままでは、アルバート様は絶対に倒れますし、ナナもそれを喜ぶとは思えません。


機会を用意するだけです。

それでもよろしくて?」


「勿論です。ありがとうございます」


先程とは別人のように生気を漲らせて、アルバート様は頷く。


私は、来月8日を指定して、アルバート様と分かれた。

ナナに伝えて、休みと外出を届け出てもらわないといけない。




そして翌日、寂しそうに見送るエドウィン様を置いて、私は王国へと戻った。


すぐにナナと連絡を取り、事情を話して休みを取ってもらう。


ナナは勇敢な人だから、こういうことから逃げたりはしない。


私たちは、どんな結論をナナが出しても、それに味方するだけだ。




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