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32 お嬢様、こじつけた2

 

 わたしがグレートリディ・驚きのパープル(仮)を作り終えて一息ついた頃に、ロザリーからのお手紙が届いた。

  この前書いたお返事に、お兄さまの予定が空いている日を書いたのだ。さて、ロザリーはいつ招待してくれるのかな? 明日でも良いのだけれど。


「わあー! 3日後かぁ。たのしみっ」


  早い方が良いと思っていたけれど、いざ日にちが決まると緊張してきた。

  ドレスは何を着る? 髪型はどうする? 一応、おやつも持って行こう。グレおじさんに相談しないと。やっぱり、3日後で良かったかも。明日じゃ準備が間に合わないわ。


「うーん……ドレスはみどり色。かみがたは、パーティのときみたいにしてもらおう! おやつは……」


  葡萄のゼリー? いや、無花果のパウンドケーキもいいな。アップルパイも捨てがたい……




「と、いうことなのだけれど。グレおじさん、なにがいいと思う?」

「お嬢ちゃんのお友だちに渡す菓子だからな。いつもと同じようなのじゃなくて、凝った菓子を作りたいんだが……3日後か……ボンボン・ショコラは間にあわねぇ、栗も……駄目だな……そしたら……」


  おおう。グレおじさんが本気っぽい。

  なんだか職人さんって感じがする……迷うなら全部作っちゃえばいいのに、って思うのはわたしが素人だからなのか。


「……よし。リディアお嬢ちゃん、パッションフルーツ風味のカスタードタルトでいいか? いや、本当はシブーストの方が旨いと思うんだが、食べるまでどれだけの時間があるかわかんねぇからな。早く食べねぇと、パイもしなっとなるし、クリームが沈んじまうし、上のカラメルも溶けちまうし……タルトには、ジャンドゥーヤを入れてみよう。小さめのサイズにして、飾りは……」


  おおう。早口過ぎてカスタードタルトまでしか聞こえなかった。いつもと違うカスタードタルトってどんなのだろう? まあ、グレおじさんが作るなら美味しいに違いない。


「グレおじさん、あとはよしなに……」


  よしなにって、実は最近覚えた言葉。デイヴィスが使っていた。良いように、とかよろしくって意味らしい。なんて便利な言葉だろう。ただよろしく! って言うより、意味深な感じでかっこいい。さすが執事長、使う言葉がいちいち渋い。

  わたしは分からない事がある時には、重々しく頷いてよしなに……って言うことに決めたのだ。そうすれば理解していないことなんて、誰にもバレないのである。




「リディ? そろそろ夕食だよ」


  厨房から部屋へ戻ったわたしは、長椅子に寝転がって、うとうとしていた。今朝は早起きしたし、日中は諜報員として暗躍していたので疲れてしまった。

  お兄さま、いつの間にか帰ってきてたのね……声は聞こえるけれど、目が開かないの。


「眠くなっちゃったの?」


  そうなんです。


「そっかぁ……ご飯も食べられなさそう?」


  うん、今日はもういいや。グレおじさん、ごめんなさい。


「分かった。リディと食べるのを楽しみにしていたけれど、仕方がないね。ゆっくり休んで」


  ごめんね、お兄さま。でも、ほぼ毎日一緒に食べているのに、未だにわたしとご飯食べるのが楽しみなの?


「リディは僕の癒しだからね」


  あ、そう? 照れちゃうな。わたしもお兄さまとご飯食べるの楽しいよ。


「ふふ、ありがとう。メイドを呼んでおくから、せめて着替えてから寝るようにね。じゃあ、また明日」


  はーい。また明日ー!


  パタン、と扉が閉まる音がした。

  わたしは気がついてしまった。

  ワタシ、ヒトコトモ、シャベッテナイヨ。



「…………あら? リディアお嬢様、起きていらしたのですか? もう寝てしまっていると聞いたので、ノックも無しで入ってしまいました。さ、お着替えしましょうっ」

「ニーナ……いえ、なんでもないわ……」


  お兄さまとお話したあと(心を読まれるのをお話したと言っていいのかは悩むけれど)、わたしは一気に目が覚めた。


  寝る支度も整って、布団の中でひとり、グレートリディ・驚きのパープル(仮)の正式名称を必死に考えている。

  お兄さまは会うたびに進化している気がして、そんな凄いお兄さまに『グレートリディ』なんて名付けられたお花を渡すのが、とても畏れおおくなってしまったのだ。

  どんな名前にしよう……うーん……


「ユーリウス・パープルローズ」


  そのまますぎる。


「グレートユーリウス・バラ・パープル」


  長くはなったけれど、適当感が出てしまっている。お兄さまが優秀なのはみんな知っているし、わざわざグレートってつけなくてもいいか。あと、やっぱりわたしの名前も入れたくなっちゃった。


「ユーリウス・むらさき・リディアローズ」


  というか、あんまり長い名前にしたら忘れちゃったりして。お兄さまじゃなくて、わたしが。うん、絶対忘れる。もっと簡単にいこう。


  うーん……ユーリウス、リディア、むらさき、バラ……そうだ!


「ユーリディ・パープルローズ! なんていいんじゃない? おぼえやすい!」


  お兄さまとわたしのお花だよって分かりやすいし。うん、そうしよう。

  明日はお兄さまも1日ずっと家に居るし、バラが染まったらすぐに渡そうっと。よし、すっきりした。おやすみなさい。






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