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31 お嬢様、こじつけた

 

「ぱく、むしゃ……ごくん。ふむ」


  ミートパイを食べ終えて一息ついたわたしは、逃げていた問題と向き合うことにした。

  そう、お兄さまに渡すお花について、そろそろ考えなくてはいけない。

  花言葉辞典をめくる。


「あいのきずな……完ぺき……美しい人……世話ずき……うーん」


  なんだか、お兄さまの要素はあるのだけれど。とても足りないっていうか……そもそも、お兄さまの魅力を一言で済ませるっていうのが無理なんだわ。


「かっこよくて頭がよくてやさしい、わたしのだいすきなじまんのお兄さまって花ことばがあればいいのに……」


  調べなくても分かる。そんな花言葉はない。

  うう、どうしよう。お兄さまは優しいから、わたしがあげたお花はなんでも喜んでくれると思う。

  だけどせっかくなら、あんなに拗ねていたお兄さまが思いっきり喜ぶような、特別なお花をあげたい。


「あーあ、花ことばが自由にえらべたらいいのになぁ」


  全部のお花に花言葉が決まっているなんて。今あるお花全ての中に、わたしの求める花言葉はないのよ。


「ん? 今あるお花……?」


  つまり、新しいお花ができれば、その花言葉はわたしが決めていいってこと?




「マヌエラっ! 見つけたー!」

「あら、リディア様。どうしましたか?」

「ねえ、マヌエラのじっかのお店って、ここから遠い?」

「私の実家? いえ、王都の中でも貴族街よりにありますから、そんなに遠くはございませんけれど。何か欲しいものが?」

「うん! あのね、せんりょうをゆずってほしいの! ちょっとでいいんだけれど……だめ?」

「せんりょう……染料? 生地や毛糸ではなく、染料が欲しいのですか?」

「うん、わたしの目の色みたいな、むらさきの毛糸をまえに見せてくれたでしょう? あれをそめたやつがほしいの」

「かしこまりました。お急ぎですか?」

「うん! きょうほしい!」

「まあ、それでは急いで使いを出しますわ」

「おねがいしまーす!」


  リディアは 染料を てにいれた!




「にわしさんっ! バラ! 白いバラもらうね!」

「はいはい、お嬢様。お好きにお取りくださいね。後で整えておきますよ」

「ありがとう!」


  リディアは 白いバラを てにいれた!




「ニーナ! あたらしい花びんを持ってきて!」

「はーい。何をなさるのですか?」

「あたらしいお花をつくるのよ!」


  リディアは 魔法の花瓶を てにいれた!




「ふん、ふんふふーん!」


  わたしは今、自分の思いつきに感動している。ぴったりの花言葉がない? なら、新しく作ればいいのよ。お兄さまだけのお花を。

  そう、わたしは白バラを紫バラに変えることを思いついた。白いお花を色水に浸ければ、その色に染まる。誰に聞いたか忘れたけれど、わたしはそれを知っていたのだ。


「じゃじゃ〜ん! これ! なんと、まほうの花びんなのだ!」


  いや、普通の花瓶だけど。こういうのはきっと気分も大事だから、恥ずかしがってちゃダメなんだから! 魔法の花瓶だから、きっとうまく染まる! ついでに呪文も唱えておこう。


「……ちちんぷいぷい、ひらけごま!」


  なんか自然に出てきた。意味は分からないけれど、これは呪文だから、恥ずかしくない。うん、ほんとに、恥ずかしくないよ!


  剪ってからしばらく放置した、まだ開ききっていないバラを、染料を溶かした水に浸ける。

  水が足りなくて元気がない花の方が、ごくごく色水を吸ってくれる気がする。

  あとは陽の当たるところに置いて、花が開いて染まるまで待つだけ!


「なまえは何にしようかなぁ……グレートリディ・むらさきローズにしようかなぁ」


  いや、グレートリディ・驚きのパープルも良いかも。

  花言葉は『かっこよくて頭が良くて優しい、わたしの大好きな自慢のお兄さま』に決定!

  ああ、お兄さまの反応が楽しみだなぁ。

  まさか、わたしが新しいお花を作り出しているとは思わないだろう。

  わたしは常に、みんなの期待の上を行く女なのだ。えへへ。



 

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