↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
境界守と九官鳥  作者: 俐月
出会い編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/48

文を運ぶ、紙の鳥



 世間様が休みの日こそ、陰陽師業は忙しい。

 間継は、殺気の滲んだ表情でそう言った。



「忙しいって、妖怪もお祭りとかするんですか?」


「寝ぼけてんのか? お前」


「もう昼ですよ! 俺は早起き派だし、今日はいつも以上に頭冴えてますよ!」



 秋臣が反駁した直後、ポケットの中で通知音が鳴った。


『秋―、お前夏休み入ってすぐ実家帰ったのか?バイトどうなったんだよ』


 湊からだった。


 そういえば、あれから彼と会っていない。マンションの大家さんには、今月までで引き払うとはもう言っておいたけど。


 画面を見て悩んでいると、いきなりスマホを取り上げられた。



「ちょ」



 取り返す暇もなく、間継が秋臣のスマホで何か打ち始める。返された画面には。


『ごめーん( ゜Д゜) 今、短期バイトで実家の近くにいてさ。そういうことだから、また九月に会おうぜ(=゜ω゜)ノ』


 誰だよ。俺、顔文字なんか使ったことねぇよ……


 送信済みのメッセージに、秋臣は冷や汗を感じた。



「間継さん、俺の実家がどこにあるかすら知らないでしょ」


「あ? 三重だろ」


「なんで知ってるの!? こわっ」



 陰陽師という人たちには、もしやこの世界の法律は適応されていない?


 秋臣がそんな思考に陥った時、どこかからカツンと小気味良い音が聞こえてきた。

 カツン、カツン。小石が、塀に投げられるような音だ。



 立ちあがった間継が、庭に繋がるふすまを開け、縁側へ出た。秋臣も倣う。


 屋根の上側? いや、もっと庭の方から……

 目を凝らしていると、庭の上空に一羽の黒い鳥が、くちばしで宙をつついていた。


 まるで何かに阻まれているように、そこから先に入ってこない。結界だ。



 その間にも草履を履いて、庭に出た間継が上を仰ぐ。両腕を組んで、しばらく眺めていた彼が「鈴音」と呼びかけた。



「食っていいぞ」


「えー、あれ美味しくないからいやだよ」


「じゃあ、引き裂いてこい」


「はいよ~」



 どこからともなく現れた鈴音が、途端狐の姿になり、地を蹴った。


 あまりにも軽やかに飛び上がった彼女は、結界に立ち往生する鳥をパクリと咥えた途端、噛み砕いた。


 一部始終を見ていた秋臣は、「いっ……!」と喉に悲鳴を詰まらせる。


 しかし、落ちてきたのは鳥ではなく、白い紙きれだった。


 それを拾った間継が舌打ちする。おそるおそる隣まで行った秋臣は、彼の手の中にあるものを覗き込んだ。


 鈴音の牙跡のある、白い鳥型の紙。



「もしかしてこれ、あの有名な式神でやつですか!?」


「そんないいもんじゃねぇよ」



 心底不快そうに返答した彼が、紙を開く。中には達筆な文字で、何かが書かれてあった。



「なんですか? それ」


「他家からの報せだ」



 日本各地に、陰陽師の血筋を受け継ぐ家が他にもあるらしい。


 世間の人々が動く時期には、毎回のようにこうして、他の家から依頼という形で文が届くと彼は言った。



「それぞれ縄張りみたいなもんがあるからな。あっちで手に入った情報で、こっちの縄張りのものはこっちで片付けろって、嫌味ったらしい報せが届くんだよ」



 陰陽師という人たちにも色々あるのか。それにしても縄張りって……



「近畿南部で妖怪が迷ってるらしい」



 よかったな。送ったメッセージ通り、実家辺りじゃねぇか。



 そんな冗談を言って来た間継に、秋臣は忘れていた先ほどのメッセージの文面を思い出した。

 首を振って、すぐに振り払う。



「近畿って、遠くないですか?」



 そういえば、ここ京都だけど。すんごい関西だけど!



「間継家は、関東から近畿までなんだよ。その他、北と西に分かれて、他二家が受け持ってる」



 秋臣は、紙きれを散り散りに破っていく間継をじっと見た。



「なんか間継家ってすごいんですね」



 かなり広い範囲の縄張りがある陰陽師の家? 自分とさして変わらない年齢の男が、いきなり大きく見えた。


 怪訝そうな表情で間継がこちらを見てきた。呆れたような嘆息の後。「そういうことでいい」とぶっきら棒に答えた彼は、さっさと縁側へと戻っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。