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境界守と九官鳥  作者: 俐月
間継屋敷編

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鈴音の主、佐京は怖し

 


 あーふわふわするー、なんか花畑があるー、すごーい。ここって、もしかして天国?

 見たことない花だ。駆け回りながら、うふふーあははーってしようかな。青春だよね。


 そう思って、花畑に近づいた時、突然前に誰かが立っていた。



「冬吾秋継。我を裏切った報い必ずや――」



 影が揺れ、一本の花が手折られる。影が揺らめき、何かの形をなして……




「妖狐!?」


 ハッと目が覚めて飛び起きた。


 あれ? 俺、重世にいたはずじゃ……そういえば、なんかあの後戻ってきた気がする。

 どうやって戻ってきたっけ? たしか……


 ふすまが静かに開く音がした。



「冬吾くん。加減はどうかな?」


「佐京さん?」



 いつもの居間だった。座卓は隅に寄せられていて、昼の日差しが差し込んでいる。

 盆を持った佐京が、秋臣の寝ていた布団の側に正座した。



「酷い目にあったと聞いたよ。律の監督不足で申し訳ないね」


「いえ、俺も油断していたので……」



 あの後すぐに現世に繋がる扉を開いたとか。

 重世のものを口にしたときの一番の対処法は、現世のものを口にすることらしく。


 しかし、そこでもまた問題が発生した。

 帰りは最短ルートで扉を開いたため、秋臣がさらにに酔って、体調を悪くしてしまったらしい。


 覚えていない。意識が朦朧としていた気がする。



「重世と人世ではあらゆるものが違うからね。慣れていないと変動に酔ったり、体調を崩すんだ」



 厳密にいえば、重力そのものが違うと佐京は言った。



「なんか手間をかけたみたいで……」


「全て律の責任だよ。冬吾くんが謝ることじゃないね」



 随分厳しい発言に思え、話題を逸らすことにした。



「それより、佐京さんは大丈夫なんですか?」


「たまにこうして体調がいい時があってね。ゲンジロウ殿の薬はよく効くからね」


「ああ、なるほど」



 そういえば間継がいくつか薬を貰って帰っていた。



「間継さんは?」


「朝に仕事に向かったよ」


「え。俺いかないと――」



 体調を崩されたら仕事に支障が出るとか言っていたのだ。つまり、俺がいた方がいい仕事に違いない。



「秋臣~、今日は安静にってゲンジロウがいってたよ~」



 そこに鈴音が現れた。



「佐京が看病してくれるなんて珍しいことなんだから、ゆっくりしておくべきだよ~」


「それこそよくないでしょ!」



 病人に看病させるなんて、もってのほかだ!

 そう思って立ち上がろうとした時、予想以上に強い力で肩を上から押しとどめられた。佐京だ。


 彼はにっこりと微笑んだまま、しっかり頷いてきた。



「息子の監督不足は、父である私が責任を取らないとね。まさか、それすらさせてくれないつもりかな?」


「え、いやそういうわけじゃ……」



 なんだろう。すごい威圧感がある。



「佐京には逆らわないのが賢明というものだよ~。何せ、ぼくを伏せた境界守は佐京だけなんだからね~」



 鈴音が佐京の膝元にぴょんと乗る。見たことのないほど嬉しそうな顔をして、佐京の顔を見ていた。



「そういえば、鈴音ちゃんの主って……」


「そうだよ、ぼくの主は佐京だよ。昔、ぼくもやんちゃをしていた時期があってね。

 その時に佐京に、もうそれはそれは怒られて」



 重世でやんちゃ(何をしたのかは言わなかった)していた鈴音を、たまたま通りかかった佐京が宥(・)め(・)た(・)らしい。



「あの時の私はまだ若くてね。つい怒ってしまって、気づいたら調伏してしまっていたんだ」



 気付いたら調伏するって、どういうことだよ。



「佐京は今の律よりも断然強かったんだ」



 まるで自分のことのように胸を張って見せた鈴音に佐京はそっと微笑み、その視線がこちらへ向けられた。


 あ、やっぱりこの人、間継さんの父親だ。

 しかも、間継さんよりタチが悪い部類だ。


 秋臣は先ほど肩を抑えてきた手を思い出して、口元を引きつらせる。



「お、お言葉に甘えて、今日はゆっくりさせていただきます」



 こういう人には逆らったらいけない。秋臣は佐京から逃げるように、布団を被りなおした。




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