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第24話 消えた48人につい、、、て、、?

――朝。


国立能力者養成機関。


一年A組。


いつもと変わらない朝のはずだった。


「眠そうだな、悠真。」


林翔太が隣から顔を覗き込む。


「……ちょっと寝不足。」


「また訓練してたのか?」


「まあ、そんなところ。」


悠真は笑ってごまかした。


昨夜見た夢。


七年前の事件。


そして――。


五年前。


最後に浮かんだ数字が頭から離れない。


「五年前……。」


「ん?」


「いや、何でもない。」


その時。


藤原優奈が会話に入ってくる。


「そういえば、昨日のニュース見た?」


「ニュース?」


「ドラグーンのこと。」


悠真が顔を上げる。


「……ドラグーン?」


「北の方で、始祖種の痕跡が見つかったらしいよ。」


「マジ?」


林が驚く。


「でもドラグーンって、300年前から生きてるっていう……。」


「そう。だから討伐隊もかなり警戒してるみたい。」


悠真は黙って聞いていた。


ドラグーン。


人類が300年間、一度も倒せなかった存在。


自分にはまだ遠い話だ。


それでも。


なぜか、その名前を聞くと胸の奥がざわついた。


「神崎。」


高橋陽斗が声をかける。


「今日の放課後、またやるか?」


「訓練?」


「ああ。」


高橋が槍を肩に担ぐ。


「この前は途中で終わったからな。」


悠真は少し笑う。


「いいよ。」


「じゃあ決まりだ。」


その瞬間。


教室の扉が開いた。


「席につけ。」


桐谷教官が入ってくる。


生徒たちが席に戻る。


「今日は午前の授業が終わったら、実戦訓練に移る。」


「最近、事件が続いている。」


桐谷は教室を見渡す。


「だからこそ、基礎を疎かにするな。」


「能力に頼りすぎれば、判断を誤る。」


悠真はその言葉を聞きながら、木刀を握る感覚を思い出していた。


能力がない。


だからこそ。


自分には、鍛えるしかない。


昼休み。


食堂。


一年A組の生徒たちが集まっていた。


「なあ、結局さ。」


林が箸を止める。


「五年前に消えた48人って、何だったんだ?」


悠真の手が止まる。


「またその話?」


木村彩花が呆れたように言う。


「だって気になるだろ。」


「48人全員が討伐隊関係者なんでしょ?」


「遊撃隊だったって聞いた。」


高橋が答える。


「でも、記録がほとんど残ってないらしい。」


「なんで?」


「分からない。」


そこで。


林が声を落とす。


「俺の兄ちゃんが言ってたんだけどさ。」


「昔、その事件のあとに討伐隊の人事が大きく変わったらしい。」


悠真が顔を上げる。


「人事?」


「ああ。」


「でも、詳しいことは知らないって。」


悠真は黙り込む。


佐伯が言っていた。


48人。


その中には――。


七年前の事件を生き残った二人がいた。


そして。


その48人を率いていたのが、あの男。


「……。」


「悠真?」


優奈が声をかける。


「どうしたの?」


「いや……。」


悠真は首を振る。


「ちょっと気になっただけ。」


その時。


食堂の大型モニターにニュース速報が流れた。


『災厄級始祖種に関する最新情報です。』


生徒たちが一斉に画面を見る。


『北部地域にて、始祖種ドラグーンのものと見られるエネルギー反応が――』


悠真は画面を見つめる。


黒い翼。


巨大な影。


そして。


金色の瞳。


映像はすぐに切り替わった。


『討伐隊は現在、周辺地域の警戒を――』


「……ドラグーン。」


悠真が小さく呟く。


遠い存在。


そう思っていた。


だが。


なぜか。


自分の未来と無関係だとは思えなかった。


午後。


実戦訓練。


演習場。


「神崎!」


高橋が槍を構える。


「今度は止めるなよ!」


「分かってる!」


開始の合図。


二人が同時に踏み込む。


――ガキィン!


木刀と槍がぶつかる。


悠真が横へ回り込む。


高橋が槍を振る。


悠真はしゃがんでかわす。


「そこ!」


木刀を振り上げる。


高橋が柄で受ける。


「甘い!」


高橋が押し返す。


悠真が後ろへ飛ぶ。


距離が開く。


「……。」


呼吸を整える。


以前より。


動ける。


相手の動きも見えるようになってきた。


だが。


まだ足りない。


高橋が突っ込んでくる。


悠真は木刀を構える。


そして――。


真正面から迎え撃った。


――ガァン!!


二人の武器が激しくぶつかる。


「……!」


高橋が笑う。


「いいじゃん。」


悠真も笑った。


「まだ終わってない。」


「そうこなくちゃな!」


二人は再び距離を詰めた。


その様子を。


演習場の端から桐谷が見ていた。


「……。」


悠真の動きは、確実に変わっている。


能力はない。


それでも。


少しずつ。


確実に前へ進んでいた。


訓練終了後。


悠真が汗を拭いていると。


端末が振動した。


知らない番号。


「……?」


表示された名前はない。


メッセージが一件。


開く。


そこには短い文章だけがあった。


『48人について知りたいなら、旧資料庫へ行け。』


悠真の表情が変わる。


「……誰だ?」


続けて。


もう一件。


『ただし、一人で来い。』


悠真は画面を見つめる。


罠かもしれない。


それでも。


知りたい。


五年前の48人。


七年前の事件。


そして。


あの男。


悠真は端末を握りしめた。


「……行くしかない。」


放課後。


旧資料庫。


学校の敷地の外れにある古い建物。


現在はほとんど使われていない。


悠真は周囲を確認しながら扉を開ける。


ギィィ……。


薄暗い。


古い資料が並んでいる。


「……ここか。」


悠真は奥へ進む。


五年前。


遊撃隊。


48人。


資料を探す。


そして。


一冊の古いファイルを見つけた。


表紙には――。


『遊撃隊・行方不明事案』


悠真の手が止まる。


ページを開く。


そこには。


隊員数――48名。


出動先――秘匿。


戦闘記録――欠損。


生存確認――なし。


「……全部消されてる。」


ページをめくる。


さらに一枚。


そこには手書きの記録が残されていた。


『対象部隊は通常の討伐任務として出動。』


『しかし、現場到着後に通信途絶。』


『ゲート反応なし。』


悠真は眉をひそめる。


「ゲートが……なかった?」


48人が消えた。


それなのに。


モンスターが出現した形跡も。


ゲートもない。


「じゃあ……何があったんだ?」


その時。


背後で――。


カタン。


音がした。


悠真が振り返る。


誰もいない。


「……誰かいるのか?」


返事はない。


悠真は木刀に手を伸ばす。


そして。


資料のページに目を戻す。


最後の一文。


そこには――。


『現場に残されていたものは、足跡のみ。』


悠真の目が見開かれる。


「……足跡だけ?」


その瞬間。


資料庫の照明が消えた。


「!」


暗闇。


悠真は木刀を構える。


「誰だ!」


沈黙。


そして。


暗闇の中に――。


紫色の光が浮かんだ。


一瞬。


その光の奥に、人影が見える。


だが。


次の瞬間には消えた。


床に何かが落ちる。


カラン。


悠真が拾い上げる。


古い金属製のプレート。


そこには数字が刻まれていた。


47


「……47?」


その瞬間。


頭の中に声が響いた。


『一人足りない。』


悠真が顔を上げる。


「……誰だ?」


返事はない。


ただ。


紫色の光が一度だけ揺れた。


そして消えた。


夜。


廃墟。


謎の男は、遠くの街を見ていた。


その隣には、数人のローブ姿。


しかし。


男は振り返らない。


「……資料を見つけたようだな。」


ローブの一人が尋ねる。


「予定通りですか?」


「いや。」


男は静かに答える。


「少し早い。」


「では――。」


「放っておけ。」


男は夜空を見る。


「神崎悠真は、自分で答えを探そうとしている。」


「なら。」


「自分の足で辿り着かせればいい。」


その言葉の先。


遠い空に、一瞬だけ黒い影が浮かんだ。


男が目を細める。


「……ドラグーン。」


ほんの一瞬。


男の表情が変わった。


だが。


すぐに元へ戻る。


「まだ、あいつの話じゃない。」


男は背を向けた。


「今はな。」


同じ頃。


悠真の部屋。


机の上には、旧資料庫から持ち帰ったメモ。


48人。


その下に。


自分で書き足した。


7年前――第2の事件。


5年前――48人失踪。


悠真はペンを置く。


「……何が繋がってるんだ。」


そして。


ふと。


窓の外を見る。


夜空。


何もない。


それでも。


胸の奥に、妙な感覚が残っていた。


まるで。


遠くのどこかから。


誰かに見られているような――。


その時。


机の上の端末が震えた。


新しいメッセージ。


悠真が開く。


そこには。


たった一行。


『48人の中に、まだ生きている者がいる。』


悠真の目が見開かれる。


「……生きてる?」


その瞬間。


画面が暗転する。


そして。


新たな文字が浮かび上がった。


『次に探すべきは――7年前の生存者。』


悠真は息を呑んだ。


――五年前に消えた48人。


その真相へ向かうための扉が。


今、初めて開いた。

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