↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/29

第22話 裏切り、、、?

――夢。


暗闇の中に、文字だけが浮かんでいる。


『五年前。』


悠真は、その文字を見つめていた。


「……五年前。」


すると。


暗闇の奥から、かすかな足音が聞こえた。


一つ。


二つ。


三つ。


やがて、その音は次第に増えていく。


――ザッ。


――ザッ。


――ザッ。


悠真が振り返る。


そこには――。


大勢の人間が立っていた。


討伐隊の装備。


武器。


そして、リミットリング。


その数――。


数え切れない。


「……誰だ?」


誰も答えない。


ただ、一人の男が前へ出る。


右腕は義手。


黒い装甲。


その姿は――。


あの男だった。


「……。」


男は悠真を見る。


しかし、今までとは違う。


敵意がない。


ただ、悲しそうな目をしていた。


「お前は……。」


男が口を開く。


「何を知りたい?」


悠真は一歩近づく。


「五年前に消えた48人について知りたい。」


男の表情が変わる。


「……そうか。」


その瞬間。


景色が変わった。


五年前。


荒野。


討伐隊の部隊が、巨大なモンスターと戦っていた。


爆発。


能力の衝突。


銃声。


「右から来るぞ!」


「了解!」


大勢の隊員たちが一斉に動く。


その中心に――。


謎の男がいた。


まだ現在ほど深い傷を負っていない。


右腕は義手。


その周囲には、見覚えのある隊員たち。


――47人。


悠真は息を呑む。


「……この人たちが。」


あの男についていった47人。


その中には――。


7年前の事件を生き残った二人の姿もあった。


そして。


隊員たちは男を信頼していた。


「隊長!」


一人が叫ぶ。


男は振り返る。


「全員、下がれ!」


「ですが!」


「いいから下がれ!」


男が前へ出る。


巨大なモンスターが咆哮する。


男の身体から赤い力が噴き出す。


「――行くぞ!」


激突。


――ドォン!!


地面が大きく揺れる。


悠真はその戦闘を見つめていた。


「強い……。」


だが。


それ以上に気になった。


戦っているのは、この48人だけではない。


遠くに――。


別の討伐隊がいる。


その部隊は、戦場を囲むように配置されていた。


「……?」


悠真は違和感を覚える。


「なんで……あの人たちは戦ってないんだ?」


その瞬間。


映像が止まった。


全員が動かなくなる。


男だけが、ゆっくりと振り返る。


「……気づいたか。」


「え?」


「俺たちが消えた理由を。」


男の背後。


遠くにいた討伐隊が、一斉に武器を構える。


悠真の顔が青ざめる。


「……待って。」


「まさか。」


男は答えない。


ただ。


「俺たちは――。」


その瞬間。


――ドンッ!!


映像が崩れた。


「……っ!」


悠真が目を覚ます。


寮の部屋。


時計は午前4時。


「……今のは。」


息を整える。


五年前。


48人。


そして、あの戦場にいた別の討伐隊。


「……誰かに襲われた?」


だが。


それならなぜ。


48人は全員、消息不明になったのか。


悠真は考え込む。


その時。


机の上の端末が震えた。


「……?」


画面を見る。


通知は一件。


送り主は――。


不明


悠真が恐る恐る開く。


そこには一枚の画像があった。


五年前の討伐現場。


そして。


その写真の隅に――。


一人の人物が映っていた。


「……誰だ?」


画像を拡大する。


黒い制服。


討伐隊の隊章。


だが。


顔は黒く塗り潰されている。


その下には一つの文字。


『裏切り者』


「……!」


突然。


画像が消えた。


端末も通常画面に戻る。


「何だったんだ……。」


悠真は端末を握りしめる。


翌朝。


国立能力者養成機関。


一年A組。


教室では、生徒たちがいつも通り話していた。


だが。


悠真は一人、黙っていた。


「悠真?」


青木翔が声をかける。


「どうした?」


「……いや。」


悠真は首を振る。


「なんでもない。」


だが。


頭の中には、昨夜の光景が残っている。


48人。


そして――。


「裏切り者」。


そこへ。


桐谷教官が入ってきた。


「全員、席につけ。」


生徒たちが静かになる。


「今日は実戦訓練だ。」


演習場へ移動する。


「今回の訓練は、複数人での戦闘を想定する。」


桐谷が説明する。


「敵が一体とは限らない。」


「味方が全員、同じ方向を向いているとも限らない。」


悠真の動きが止まる。


「……。」


桐谷が悠真を見る。


「神崎。」


「はい。」


「どうした?」


「……いえ。」


「なら集中しろ。」


「はい。」


訓練開始。


生徒たちが一斉に動く。


能力。


武器。


身体能力。


それぞれを組み合わせて戦う。


悠真も木刀を握り、敵役へ向かって走る。


――ガキン!


攻撃を受ける。


避ける。


踏み込む。


そして。


一撃。


「そこまで!」


桐谷の声。


訓練が止まる。


「神崎。」


「はい。」


「今の動きは良かった。」


「ありがとうございます。」


「だが。」


桐谷は悠真を見る。


「戦場では、自分の目で見たものだけを信じるな。」


悠真が顔を上げる。


「……え?」


桐谷はそれ以上言わなかった。


「次。」


昼休み。


悠真は佐伯を探していた。


だが。


今日は見つからない。


「……どこにいるんだ?」


その時。


校内の廊下に、討伐隊員が数名歩いているのが見えた。


その一人が――。


「……。」


悠真は立ち止まる。


隊員の腕章。


見覚えがある。


夢で見たものと同じだった。


「……五年前。」


その隊員がこちらを見る。


一瞬。


目が合った。


そして。


すぐに視線を逸らす。


悠真は追いかけようとする。


だが。


「神崎。」


背後から声がした。


桐谷だった。


「どこへ行く?」


「……あの人を。」


「やめておけ。」


「でも――。」


「今はまだ。」


桐谷は低い声で言う。


「お前が追うべき相手じゃない。」


悠真は黙る。


「……何か知ってるんですか?」


桐谷は答えない。


ただ。


「知れば、戻れなくなることもある。」


そう言って歩き去った。


悠真はその背中を見つめる。


その頃。


廃墟。


謎の男の前に、ローブの人物が立っていた。


「神崎悠真が、五年前の夢を見たようです。」


男の表情が変わる。


「……もうそこまで来たか。」


「どうします?」


男はしばらく黙っていた。


やがて。


「何もしない。」


「ですが――。」


「まだ早い。」


男は窓の外を見る。


そこには、47人の仲間たち。


静かに訓練を続けている。


「俺たちは5年前に消えた。」


「なら、まだ死んだままでいい。」


「誰にも見つからず。」


「誰にも知られず。」


ローブの人物が尋ねる。


「いつまで?」


男は答える。


「神崎悠真が――。」


一瞬だけ目を細める。


「自分の目で、すべてを見る時までだ。」


夜。


悠真は眠れず、寮の窓から外を見ていた。


五年前。


48人。


夢。


裏切り者。


そして。


桐谷の言葉。


「……自分の目で見たものだけを信じるな。」


悠真は目を閉じる。


その瞬間。


また紫色の光が浮かんだ。


窓ガラスに文字が現れる。


『次に見るべきは――』


悠真は息を呑む。


文字が一つずつ浮かぶ。


『7年前。』


そして最後に。


『あの日、二人だけが生き残った。』


悠真の目が見開かれる。


「……7年前。」


その瞬間。


遠くから――。


何かが聞こえた。


金属音。


――ガキン。


悠真が窓の外を見る。


校舎の屋上。


一瞬だけ。


右腕を失った黒い影が立っていた。


「……!」


次の瞬間。


影は消えた。


悠真は窓を開ける。


だが。


そこには誰もいない。


ただ。


夜の風だけが吹いていた。


そして――。


悠真の耳元で。


あの声が囁く。


『次は、7年前だ。』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。