第2話 何も持たない少年
朝8時30分。
国立能力者養成機関。
モンスターと戦う能力者を育成する、日本最高峰の学校。
ここに通う若者は皆、人類を守るという夢を胸に集まっていた。そして、今日ここでは今年から新たに入学する者たちを迎える入学式が始まっていた。
新入生たちが講堂に集まる。
入学式開始――
壇上に立った教官は、巨大なモニターを映しながら静かに口を開いた。
「諸君、ようこそ国立能力者養成機関へ。」
「ここは"能力者"を育てる学校であると同時に、人類最後の希望を育てる場所でもある。」
モニターに世界地図が映る。
世界各地には無数のゲート。
そして、各国の対モンスター部隊。
「現在、人類の防衛を担っているのは、国際対モンスター防衛機関――IAMDA。」
「その日本支部である日本対モンスター討伐隊、通称"討伐隊ゼロフォース(ZERO FORCE)"が、日本国内の最前線を守っている。」
画面が切り替わる。
『第1部隊』
『第2部隊』
『第3部隊』
『第4部隊』
「第1部隊は災厄級専門部隊。」
「日本に3本しか存在しないリミットベルトの装着者だけが所属できる。」
「つまり、日本最強の3人だ。」
会場がざわつく。
「第2部隊は大型モンスター討伐。」
「第3部隊は都市防衛および住民救助。」
「第4部隊は特殊任務、潜入、ゲート調査を担当する。」
「そして君たちは、その討伐隊を目指す訓練生だ。」
教室の空気が引き締まる。
教官はさらに画面を切り替える。
「モンスターは自然消滅はしない、太陽、水があればいくらでも生き続ける。植物みたいなもんさ、そしてこのモンスターの危険度を表した表がこれだ。」
そこには巨大なピラミッド図。
モンスター危険度
E級 一般兵器で対処可能
D級 能力者が必要
C級 小隊規模で討伐
B級 都市防衛隊出動
A級 第2部隊出動
S級 第1部隊出動
SS級 国家非常事態
Ω級 人類存亡危機
「S級以上は、リミットベルト装着者が出動する。」
「そしてΩ級は……。」
教官は少し間を置く。
「モンスター出現から約300年間で確認例は、わずか8体。」
画面いっぱいに8枚の写真が映し出される。「災厄級始祖種」 それぞれ
終焉の龍:ドラグーン、深海の王:リヴァイアサン、天空の暴風:ゼロフィス、獄炎の皇:イグニス、
雷天の覇者:ヴォルティス、大地の巨神:グラヴィオン、漆黒の支配者:ノクス、裁きの光:セラフィス
その中でも一際目立っているのが巨大な黒い龍。災厄級始祖種の中でも最強は終焉の龍:ドラグーンと言われている。
入学式式場が静まり返る。
「これらのモンスターだけは、モンスター出現から約300年間一度も討伐されていない。」
「諸君が卒業するまでに遭遇しないことを願おう。」
誰も笑わなかった。
それほどまでに、災厄級始祖種は伝説だった。
入学式とオリエンテーションが終わり新入生はとある場所へ向かっていた。
そこは自分の中にあるモンスターエネルギーの元となったモンスターの特性、適合率、リミットリング適性検査機がある測定室だ。
多くの新入生が胸を高鳴らせていた。その中の一人。
神崎 悠真。この物語の主人公である。
幼い頃、父は防衛隊員としてモンスターとの戦いで命を落とした。
父が最後に残した言葉。
「強さは能力じゃない。誰かを守る覚悟だ。」
その言葉だけを胸に、悠真は能力者を目指した。
今日は人生を決める日。
モンスターエネエルギーの元となったモンスターの特性、適合率、リミットリング適性を知ることができる適性検査。
巨大な装置の前に、生徒たちが一人ずつ立つ。
教師が説明する。
「能力者は、モンスターエネルギーとの適合によって誕生する。」
「適合率が高いほど強い能力を得られる。」
「今日はモンスターエネルギー適性検査、そしてリミットリングを実際に用いた能力発現試験を行う。」
次々と結果が表示される。
『適合率42% モンスター名:フレイムドラゴン 推定モンスターランクA 』
『適合率58% モンスター名:テンペストグリフォン 推定モンスターランクC』
『適合率71% モンスター名:サンダーフェンリル 推定モンスターランクB』
教室が歓声に包まれる。
そして――。
「神崎 悠真。」
「安心しろ!いくら適合率が低くても訓練次第でいくらでも伸ばすことができる!まさにリミット・ゼロだな!」
教師の言葉を聞き、少し落ち着いた様子になり悠真は、装置へ手を置く。
機械が動き出す。
……
……
突然、警告音が鳴り響く。
ERROR
教室がざわつく。
「再測定。」
もう一度。
ERROR
教師の額に汗が浮かぶ。
三度目。
静まり返る教室。
モニターに表示された数字。
適合率 0.00% モンスター名:該当なし モンスターランク該当なし』
教師も言葉を失う。
「……そんな……。」
データベースを確認しても、同じ結果。
人類史上初。
完全不適合者。
能力発現試験。
何も起きない。
リミットリング適性試験。
リングは反応すらしない。
教師は静かに言った。
「神崎……。」
「君は能力者にはなれない。」
教室の空気が変わる。
「0%ってマジか。」
「戦場じゃ役立たずだ。」
「史上初じゃないか?」
「よく討伐隊に入りたいと思えたよな。」
笑い声が響く。
教師は慌てて場を取り繕うような感じで悠真を励ます。
「大丈夫だ、まだお前と適合するモンスターが見つかっていないだけかもしれない、そして君は養成機関に受かったお前の実力は認める。我々はどんなものでも拒まない、だから安心してここに通え!」
ボソッ「でもこの年齢で0%なんて、、、」
悠真は拳を握り締める。
悔しい。
それでも。
帰宅後、誰もいない訓練場で木刀を振る。
一振り。
また一振り。
能力なんてない。
でも。
「何もないからこそ……」
汗が地面に落ちる。
「可能性は無限大だ。くっリミット・ゼロか、、、」
教師の言葉が脳裏をよぎる。
「そうだ、まだ可能性はあるもんな」
少し気が楽になった気がした。
その瞬間。雲が裂ける。
太陽が隠れる。
空が昼なのに夜になる。
鳥が一斉に逃げる。
誰も声を出せない。
町中にサイレンが鳴り響いた。
『緊急警戒レベルA』
『緊急警戒レベルS』
『緊急警戒レベルSS』
──ERROR
放送が途中で途切れる。
次の瞬間。
今まで誰も聞いたことのない警報が流れた。
『──警戒基準超過』
『警戒レベル Ω(オメガ)』
『災厄級始祖種を確認。』
『個体識別――ドラグーン。』
『全住民は直ちに地下シェルターへ避難してください。』
一瞬で周りの空気が変わる。恐怖するもの、興奮するもの
「ドラグーン……。」
「こ、これは、280年ぶりの観測だ……。」
窓の外。
空を覆うほど巨大な黒い影が、ゆっくりと翼を広げる。
その黄金の瞳が――
街を見下ろしていた。
その瞳は、恐怖するもの、興奮するもの、そして、何も持たない、一人の少年を見つめていた。
神崎悠真。
人類史上初の『適合率0%』。
ドラグーンの口元が、わずかに歪む。
まるで笑ったかのように。




