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第14話 限界突破

第三の実験が始まろうとしていた。


――その頃。


日本対モンスター討伐隊。


ZERO FORCE第2部隊。


佐伯隼人は、山間部に発生したゲートの前に立っていた。


「ゲート確認。」


「周辺住民の避難、完了しました。」


通信機から報告が入る。


「了解。」


佐伯はリミットリングへ視線を落とす。


昨日から、何度か妙な反応を見せている。


だが――。


「……気のせいか。」


佐伯は前を向いた。


「第2部隊、突入準備。」


隊員たちが一斉に構える。


ゲートの奥から、低い咆哮が響いた。


「来るぞ!」


次の瞬間。


ゲートから巨大な影が飛び出した。


「モンスター出現!」


地面が揺れる。


E級。


ロックボア。


「迎撃開始!」


能力が一斉に解放される。


炎。


風。


土。


雷。


討伐隊員たちが次々と攻撃を仕掛ける。


佐伯も剣を抜いた。


「――そこだ!」


一閃。


ロックボアの動きを見切り、攻撃をかわす。


そして――。


「終わりだ。」


強烈な一撃。


ロックボアが倒れ込む。


「討伐完了!」


隊員たちから安堵の声が上がる。


佐伯は息を整えた。


その時。


ピッ。


リミットリングが赤く点滅する。


「……またか。」


佐伯がリングを確認する。


しかし。


次の瞬間には正常へ戻っていた。


「佐伯隊員!」


隊員が駆け寄る。


「大丈夫ですか?」


「ああ。」


「なら、よかった。」


佐伯は頷いた。


だが。


彼自身も知らなかった。


そのリングに異常が起きていることを。


一方。


国立能力者養成機関。


一年A組。


昼休み。


青木たちは食堂に集まっていた。


「そういえば神崎。」


林翔太が悠真を見る。


「昨日の佐伯隊員との訓練、すごかったな。」


「そう?」


「いやいや、普通にすごいだろ。」


大沢健吾も頷く。


「討伐隊員相手にあそこまで動けるのは普通じゃない。」


斎藤蓮が口を挟む。


「所詮、木刀での訓練だろ。」


「実戦とは違う。」


青木が振り返る。


「お前、いちいち神崎に突っかかるなよ。」


「事実を言ってるだけだ。」


悠真は苦笑する。


「まあまあ。」


その時。


教室のモニターが突然切り替わった。


『緊急速報』


全員が振り返る。


『ZERO FORCE第2部隊、現在――』


悠真の表情が変わった。


画面に映っていたのは、山間部の討伐区域。


『討伐隊員一名が戦闘中に異常状態となり――』


映像が途切れる。


「……え?」


教室が静まり返る。


桐谷教官がすぐに入ってきた。


「全員、席を離れるな。」


「今のニュースは?」


林が尋ねる。


桐谷は答えなかった。


ただ一言。


「授業を中止する。」


その声は、いつも以上に重かった。


ZERO FORCE第2部隊。


「佐伯隊員!」


隊員たちが叫ぶ。


佐伯は片膝をついていた。


「……大丈夫だ。」


「少し……力が入りにくいだけだ。」


「医療班を呼びます!」


「必要ない。」


佐伯は立ち上がろうとする。


しかし――。


身体に異変が起こる。


「ぐっ……!」


リミットリングが赤く明滅する。


「佐伯!」


隊員が駆け寄る。


「離れろ!」


佐伯は叫んだ。


「何かがおかしい!」


能力が制御できない。


周囲の空気が激しく揺れる。


「リングを停止してください!」


「できません!」


「手動解除は!?」


「反応しない!」


隊員たちが動揺する。


佐伯は自分の腕を見る。


「……まさか。」


頭の中に、あの事件がよぎった。


LIMIT BREAK DRUG。


「俺が……。」


「実験対象にされたのか……?」


その頃。


IAMDA日本支部。


警報が鳴り響く。


「佐伯隊員の能力出力が急上昇!」


研究員が叫ぶ。


「リミットリングの制御値が異常です!」


黒崎蓮司がモニターへ駆け寄る。


「……やられた。」


「局長?」


「昨日のリングの異常反応。」


黒崎の顔が険しくなる。


「異物を仕込まれていたんだ。」


「そんな……。」


「犯人は最初から佐伯を狙っていた。」


黒崎は即座に指示を出す。


「第2部隊は戦闘を中止。」


「佐伯隊員を救出しろ。」


「攻撃は禁止だ。」


「生きて連れ戻せ!」


「了解!」


山間部。


佐伯は必死に自分を抑えていた。


「俺は……。」


「仲間を……傷つけない……。」


隊員たちは距離を取る。


佐伯の能力が暴れ始める。


それでも。


彼は剣を地面へ突き立てた。


「まだ……俺は……。」


「俺は討伐隊員だ……!」


その言葉を聞いた隊員の一人が叫ぶ。


「佐伯!」


「俺たちはお前を敵だと思ってない!」


佐伯が顔を上げる。


「……。」


「絶対に助ける!」


その言葉に、佐伯の目がわずかに揺れた。


しかし――。


遠くから、それを見つめる影があった。


廃工場。


黒いマントの男。


モニターには佐伯の姿。


ローブの人物が尋ねる。


「どうします?」


「救出される可能性があります。」


男は静かに答える。


「構わない。」


「今回の目的は殺すことじゃない。」


画面に表示されるデータ。


LIMIT BREAK


対象:討伐隊員


男はその数値を眺める。


「知りたいのは――。」


「どこまで人間の身体が耐えられるのか。」


ローブの人物が尋ねる。


「データが取れれば、それで?」


男は振り返る。


「一人では足りない。」


「……。」


「まだ足りないんだ。」


その声には、異様な執念が滲んでいた。


そして。


国立能力者養成機関。


悠真は一人、教室の窓から外を見ていた。


遠くでサイレンが鳴っている。


「佐伯隊員……。」


拳を握る。


悠真は、以前佐伯と初めて対戦した時のことを思い出す。


そして昨日。


「前に対戦したときより、動きが良くなった。」


その言葉が、悠真の頭に残っていた。


悠真は立ち上がった。


「……俺に何かできることはないのか。」


その時。


桐谷教官が教室へ戻ってきた。


「神崎。」


悠真が振り返る。


「はい。」


桐谷はしばらく悠真を見つめた。


「今は何もするな。」


「でも――。」


「命令だ。」


悠真は黙る。


桐谷は続けた。


「今回の事件は、これまでとは違う。」


「相手は討伐隊員を狙った。」


「つまり。」


桐谷の表情が険しくなる。


「次に狙われるのが、誰なのか分からない。」


教室に沈黙が落ちる。


悠真は静かに拳を握った。


その瞬間。


窓の外で、一羽の黒い鳥が飛び立った。


その視線の先には――。


国立能力者養成機関。


そして。


一年A組。


深夜。


廃工場。


男は一人、古びた写真を手にしていた。


そこには――。


まだ若かった頃の彼と。


笑顔の家族。


男は写真を静かに伏せる。


「……まだ終わっていない。」


「俺は……。」


「全部、取り戻す。」


その瞳の奥に、一瞬だけ悲しみが浮かんだ。


しかし。


次の瞬間。


それは再び憎しみに覆われる。


LIMIT BREAK DRUG。


その事件の裏側には、


まだ誰も知らない男の過去が隠されていた。


そしてその過去が――。


やがて神崎悠真の運命と交差することになる。

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