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2 僕と記憶とちーたん

僕はまだ知らない。


あの日の出会いが、過去に埋もれた真実へと繋がっていることを。


そして、彼の中にいる”もう一人”が何を守ろうとしているのかも。


ということで前話を読んでくださった皆様、ありがとうございます。


第2章では、ちーたんに隠された”もう一つの顔”に少しだけ触れていきます。


主人公の僕も、まだ知らないことばかりです。


彼が何者なのか。

なぜ指名手配されているのか。

そして、ちーたんの中にいる”誰か”とは何なのか。


少しずつ明らかになっていく真実を楽しんでいただければ幸いです。


それでは、第2章をお楽しみください。

(少年は表の姿、青年は裏の姿で表しています)

 警察官としての勘ではない。


 もっと原始的な、本能に近いものだった。


 危険だ。


 目の前にいる青年から目を離してはいけない。


 そう身体中が警告していた。


「警察か」


 青年は口元を歪めた。


 先ほどまで怯えていた少年と同一人物とは思えない。


 目つきも声も、立ち方すら違う。


 まるで別人だった。


 僕はゆっくりと後退りしながら警棒へ手を伸ばした。


「お前は誰だ」


「あ?」


 青年は首を傾げる。


 そして面倒そうに頭を掻いた。


「誰だって聞かれてもな」


 雨粒が青年の髪を伝う。


 街灯の光がその顔を照らしていた。


「俺は俺だ」


 その答えは質問の答えになっていなかった。


「さっきまでの奴はどこへ行った」


「寝た」


「寝た?」


「ああ」


 青年は当然のように言う。


「疲れてたからな」


 意味が分からない。


 だが、その表情を見る限り嘘をついているようには見えなかった。


 いや、そもそも会話そのものが成立していない。


「お前はちーたんなのか」


 そう聞くと青年は少しだけ笑った。


「その呼び方、まだ使われてるんだな」


 その一言で確信した。


 少なくとも何かを知っている。


 さっきの少年よりも。


「お前は何者だ」


「知りたいか?」


 青年は一歩前へ出る。


 僕は反射的に身構えた。


 だが青年は気にする様子もなく空を見上げた。


「なら教えてやるよ」


 一瞬だけ沈黙が流れる。


「俺はあいつを守るためにいる」


 雨音だけが響いた。


「あいつ?」


「さっきまでいた奴だ」


 青年は胸を指差す。


「弱くて優しくて馬鹿な奴」


 その言葉に妙な違和感を覚える。


 まるで別人について話しているようだった。


「守るため?」


「そうだ」


 青年は笑う。


 だがその笑みはどこか寂しそうだった。


「人間ってのはさ、見たくないものを見ると壊れるんだよ」


 その言葉の意味を僕はまだ理解できなかった。


「だから俺がいる」


「何を言っている」


「分からなくていい」


 青年はそう言うと踵を返した。


 去るつもりだ。


「待て!」


 僕は叫んだ。


「お前は重要指名手配犯だ!」


 青年の足が止まる。


「だから何だ」


「だから何だじゃない!」


 思わず声が大きくなった。


「大勢の人間が傷付いている!」


「そうか」


 あまりにも無関心な返事だった。


 怒りが込み上げる。


「それだけか!」


「じゃあ何て言えば満足なんだ?」


 青年は振り返った。


 その目に浮かんでいたのは怒りではない。


 諦めだった。


「悪かったって言えばいいのか?」


 僕は言葉を失った。


「俺は別に構わないぜ」


 青年は静かに言う。


「全部俺がやったことにしてもな」


 その瞬間だった。


 頭痛を訴えるように青年が額を押さえる。


「……ちっ」


 苦しそうな表情。


 先ほどと同じだ。


「おい!」


「面倒だな」


 青年は笑った。


「起きるらしい」


「起きる?」


「だから言っただろ」


 青年の姿勢が崩れる。


「俺は守るためにいるって」


 次の瞬間。


 青年の身体が大きく揺れた。


 そして。


「え……?」


 弱々しい声が聞こえる。


 先ほどまでの青年ではない。


 雨の中で立ち尽くす少年が、不安そうに周囲を見回していた。


「ここ……どこですか?」


 僕は答えられなかった。


 目の前で起きた現象を、まだ理解できていなかったからだ。


 だが一つだけ分かる。


 この少年には確かに秘密がある。


 そしてその秘密は、僕が想像しているよりもずっと深い場所に隠されているのかもしれなかった。


 そしてまた一つ思ったことがある。あの青年を見てると懐かしさと嫌悪感が出てくる

「俺はあいつを守るためにいる。」


その言葉の意味を、僕はまだ知らない。


見えている真実が本当に真実なのか。


ちーたんとは何者なのか。


そして、彼の中にいる”誰か”の正体とは。


ということで第2章を読んでいただき、ありがとうございました。


ついに主人公の前に現れた、ちーたんの”もう一つの人格”。


彼は敵なのか、それとも味方なのか。


そして、なぜ「守るためにいる」と語ったのか。


まだまだ謎は多いですが、これから少しずつ真相に近づいていきます。


中学生ながら伏線なども考えて書いていますので、面白いと思っていただけたら、感想や評価をいただけると励みになります。


それでは、また次章でお会いしましょう。

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