第94話:新商品
「ところで、ユウト殿」
ウラジオが、にこにこと笑みを浮かべる。
いや。
にこにこというより、少しだけニヤニヤしていた。
「ラムネの日に全力で挑むのは良いのですが……」
「そろそろ、新商品などいかがでしょう?」
「新商品か……」
ユウトは腕を組んだ。
(やっぱりそうなるよな……)
ラムネの日。
限定販売。
希少性。
そこまでは思いついた。
だが。
次の商品。
そう言われると、急に頭が止まる。
「うーん……」
ユウトは天井を見上げる。
(何がいい……?)
(この世界で売れそうで……)
(作れそうで……)
(あんまり面倒じゃないやつ……)
「うーーん……」
沈黙。
ウラジオは期待に満ちた目で見ている。
レイヴンも無言で待っている。
(あぁ、ダメだ)
(全く思いつかない)
「いかがでしょう……?」
ウラジオが、恐る恐る聞いてくる。
「新商品……」
ユウトは腕を組んだまま、もう一度考える。
だが、出ない。
カップ麺。
魔王。
シオリ。
パソコン。
会議。
ここ最近、いろいろありすぎた。
脳が完全に休憩を求めていた。
「……出したいんですが」
「うーーん……」
ユウトは目を細める。
(ダメだ)
(今日は無理)
やがて、ぽつりと言った。
「考えておきます」
その場しのぎの言葉だった。
(そのうち思いつくだろう……)
「そ、そうですか……」
ウラジオは少し残念そうに肩を落とした。
期待していた分、落差が大きい。
ユウトは少しだけ申し訳なくなる。
だが。
本当に今は何も出てこないのだ。
「すみません」
「いえいえ!」
ウラジオはすぐに笑顔を戻した。
「ユウト殿ほどの方が考えてくださるなら、それだけで十分でございます」
(重い……)
(期待が重い……)
ユウトは心の中でため息をついた。
働かずに暮らす未来は見えてきた。
しかし、その未来へ近づけば近づくほど。
なぜか周囲からの期待が増えていく。
(おかしい……)
(俺は楽をしたいのに……)
ユウトは、封筒の入ったポケットをそっと押さえた。
(まあ……)
(不労所得のためなら、しょうがないか…)
そう自分に言い聞かせる。




