第91話:罪悪感
「さてと……」
ユウトは封筒をポケットに押し込みながら、ゆっくり立ち上がった。
「じゃあアメリさん、“俺たち”はこれで」
「私はまだ残るわよ」
セレスがあっさりと言う。
「パソコンの量産について、詰めないといけないし」
「そうなのか?」
ユウトは少しだけ意外そうに聞き返した。
「当然でしょ」
「ここからが本番なんだから」
セレスはそう言って、資料に視線を落とす。
すでに頭は次の工程に移っているようだった。
「……仕事熱心だな」
ユウトは肩をすくめた。
「じゃあ、ウラジオの所行ってくるわ」
その言葉に、アメリが顔を上げる。
「ウラジオ商会へ?」
「あぁ、その……ちょっと用事が」
ユウトは軽く手を振った。
アメリは少し不審そうにユウトを見る。
「大丈夫よ、アメリ」
セレスが口を挟む。
「裏切るわけじゃないから」
「明日のギルドの決算で忙しいのよね」
「フリーターさん」
「……」
何も言えないユウト。
「そうですか」
アメリは納得したように頷いた。
「では、また後日ご連絡いたします」
「分かりました」
ユウトはドアへ向かい、扉に手をかける。
「じゃ、行ってくる」
そう言って、ユウトは社長室を後にした。
「私たちは技術開発室へ行きましょうか」
アメリを連れて、セレスも社長室を後にする。
「ねぇ、アメリ……」
歩きながら、セレスが声をかけた。
「どうしたの? シオリ」
シオリと呼ばれることに、セレスはわずかな罪悪感を覚える。
ごめんね。
そう一言。
言って。
楽になりたい。
だが――
「ううん、なんでもない」
セレスは、にこっと笑顔を向けた。
その背中は、どこか少しだけ寂しそうだった。




