第9話:商売は順調だけど宿がない件
コンコン
誰かが個室のドアをノックする
「どうぞ」
ウラジオが答える
「失礼致します。」
「ラストオーダーのお時間でございます」
「おや、もうそんな時間に…」
指でバツ印をするウラジオ
「いやぁ、すっかり話し込んでしまいましたな」
苦笑いするウラジオ
「そうですね」
「今日はありがとうございました」
「いえいえ、おかげで記念すべき日となりました」
ルービックキューブとラムネにご満悦な様子
「さっそく明日から動きます」
「了解です」
短く返す。
店を出て車に乗り込むウラジオ
「よろしければ、ご自宅までお送りしますが?」
「いえ、まだ宿泊先が決まってないので歩いて探してみます」
「それはそれは、遅くまで申し訳ない」
「でしたら、わたしの家に泊まっていかれますか?」
「いえ、さすがにそこまでお世話になるわけには…」
(金持ちの家なんて落ち着かないだろ…)
(借りは作りたくないしな)
「そうですか?」
「では、また後日」
「はい、よろしくお願いします」
ウラジオを乗せた車が浮かび上がり夜の空へと姿を消した。
「…」
無言で見つめるユウト
夜の空気が、少し冷たい。
「さてと…」
「どこだ…ここは…?」
(せめてホテルがありそうな所まで送ってもらえば良かったかな?)
夜の街は、昼とは違う顔をしていた。
建物の壁面には淡く光る広告板。
空中に浮かぶように表示される案内表示。
(どういう原理で浮いてるんだ?)
科学都市らしい光景だった。
しばらく歩くと、いくつかの建物の前に
「空室」「満室」の表示が光で浮かんでいる。
(なるほど!分かりやすくていいな)
一軒の前で立ち止まる。
入口横に、半透明のパネルが浮かんでいた。
料金、設備、空室状況が簡潔に表示されている。
(……便利だな)
だが、人の出入りが少ない。
見上げると明かりのついてる部屋が少ない。
時間帯のせいもあるだろうが、それにしても少ない。
(ここは人気が無さそうだ。)
(辞めとこう)
直感で判断する。
そのまま通り過ぎ、もう一軒。
表示パネルが正常に稼働している。
しばらく見ていたら人の出入りがあった。
客の様子。
服装。
雰囲気。
「ここにしよう!」
扉に近づくと、自動で開いた。
中へ入るが受付には人がいなかった。
代わりに、端末のような装置が設置されていた。
(セルフか)
画面に触れる。
簡単な操作で手続きが進む。
名前、滞在日数、支払い。
金を支払い、鍵を受け取る。
小さなプレートが淡く光っていた。
(これが鍵?)
部屋へ向かう。
扉にプレートをかざす
ガチャ
鍵の解錠される音
その様子に
(ここで正解っぽいな!)
満足気なユウト
中に入る。
室内は簡素だが整っている。
照明は柔らかく、温度も一定に保たれている。
(この絶妙な狭さ!快適すぎる!!)
ベッドに腰を下し、そのまま倒れ込む。
静かな部屋の中。
外の光が、わずかに差し込む。
明日から忙しくなりそうだ。




