第10話:朝の街と、鳴り響く警報
目を覚ます。
いつの間にか寝てしまったようだ。
見慣れない天井。
(あぁ、……宿か)
身体を起こし昨日のことを思い出す。
特に問題はない。
壁に浮かぶ時間表示を見る。
(便利だな)
身支度を済ませ、部屋を出る。
チェックアウトは簡単だった。
プレートをかざすだけ。
(楽でいい)
そのまま外へ出る。
朝の街は、すでに動いていた。
車が静かに行き交い、
建物の壁面には情報が流れている。
空中表示の広告が、滑らかに切り替わる。
(この光景にも慣れてきたな)
通りを歩く。
目的はない。
(とりあえず探索だな)
角を曲がり、適当に進む。
知らない景色が続く。
しばらく歩いていると、飲食店が並ぶ通りに出た。
いい匂いが流れてくる。
(腹減ったな)
そのとき――思い出す。
(そういえば)
昨日ギルマスが、安くて美味い店があると言っていた。
(確かこの辺だったな)
記憶を辿る。
少し歩いて――見つける。
(ここか)
目立たない店。
だが、人の出入りは多い。
そのまま中へ入り席に座った。
注文はテーブルに備えられた端末からするらしい。
初めて見る料理の場合、
茶色いものを選べば失敗が少ないというのが俺の流儀だ。
俺は一通り茶色いものを選んで注文した。
---
料理が来る。
一口。
(……うまい)
余計なことはしていない。
だが、それでいい。
(これは流行るわけだ)
そのまま食べていると――
「お、兄ちゃん」
軽い声。
顔を上げる。
昨日見た男。
ウラジオの運転手。
「どうも」
短く返した。
この馴れ馴れしい感じ、苦手だな。
男は気楽そうに笑った。
「昨日ぶりだな」
そのまま自然に近くへ来る。
「そういや名乗ってなかったな」
軽く頭をかく。
「ロイドだ。ウラジオの旦那のところで運転手をやってる」
「ああ、ユウトです。」
短く名乗る。
「兄ちゃんも朝飯か?」
「ここの飯は最高だぜ!」
「そうですね。商業ギルドのギルマスに教えてもらいました。」
「ああ、あの人か。たまに見かけるな。」
納得したように頷く。
そのままロイドと適当に話を続ける。
他愛のない世間話。
街のこと。
店のこと。
どれも深い話ではない。
だが――
妙に自然だった。
そのとき。
――――――――――――
けたたましい音が、街に響いた。
――――――――――――
空気が一変する。
高く、鋭い警報音。
建物の壁面表示が一斉に赤く染まる。
(……なんだ?)
周囲の客もざわつく。
店の外から、慌ただしい気配が伝わってくる。
ロイドの表情が、わずかに変わった。
さっきまでの軽さが消える。
一瞬だけ――鋭くなる。
(……やっぱり)
ただの運転手じゃない。
そんな違和感が、頭をよぎる。
だが、ロイドはすぐにいつもの顔に戻った。
「兄ちゃん、ちょっと外見るか?」
軽い口調。
だが、その目は笑っていない。
「そうですね」
ユウトは立ち上がる。
何が起きているのか分からない。
ただ事ではないようだ。




