第83話:HelloWorld
ユウトの部屋。
「こうなったら……」
セレスが小さく呟いた。
「ユウト、目を閉じて!」
「……」
「なんで……」
「いいから早く!」
ユウトは渋々、目を閉じた。
「いい?」
「何があっても目を開けないこと!」
「絶対だから!!!」
「わかったよ……」
その時。
額に、柔らかな感触が伝わった。
「え?」
「黙って」
息がかかる。
(え??)
鼻先が、何かに触れる。
「集中して」
セレスの声が近い。
そして――
頭の中に、何かが流れ込んでくる。
「そのまま創造して」
ユウトは手を横に出した。
前には出さない方がいい。
直感で、そう感じた。
その瞬間。
額の感触が離れていく。
距離が遠のく。
「目を開けていいよ」
ユウトは、ゆっくりと目を開けた。
正面には、セレス。
そして横には――
パソコン。
「ええええええ?」
「なんで……」
ユウトは、横に現れたそれを見つめたまま固まる。
「ひみつ」
セレスは、にこっと笑った。
「あとは任せて」
セレスは、パソコンの前に座った。
そして、迷いなく電源を入れる。
低い起動音が鳴った。
画面が、ゆっくりと明るくなる。
だが、映し出されたのは。
真っ黒な画面だった。
「……」
セレスは、何の迷いもなく指を動かす。
カタカタカタカタ。
凄まじい速さで、文字が打ち込まれていく。
「お前……」
ユウトは、呆然と画面を見つめた。
「何を……」
「動かすための命令を書いてるの」
「命令?」
「形だけじゃ動かないの」
セレスは画面から目を離さずに答える。
「考え方を教えてあげないといけない」
カタカタカタ。
黒い画面に、白い文字が増えていく。
ユウトには、何が書かれているのか分からない。
ただ。
それが、自分の理解を遥かに超えたものだということだけは分かった。
「……なあ」
「それ、俺が作ったんだよな?」
「うん」
「でも、動かしてるのお前だよな?」
「うん」
カタカタカタ。
セレスは手を止めない。
「本体を作ったのは、ユウト」
「中身を整えられるのは、私」
「つまり?」
「私たちの子だね」
「言い方!!!」
─────
それからしばらくして…
「よし! できた!!」
セレスが満足げに声を上げた。
「何ができたんだ?」
「これで使いやすくなったよ」
「セレスOS」
「おーえす……?」
ユウトは首を傾げる。
「この子を動かすための中身」
セレスは、得意げに画面を指さした。
「誰でも使えるように、分かりやすくしておいたの」
「誰でも?」
「うん」
「ユウトでも」
「おい」
セレスは、にこっと笑う。
「さっ、これをアメリに見せに行きましょう」




