第74話:ずれた日常
暗闇の中、一筋の光。
「なんだ…」
「温かい…」
その光は、ゆっくりと近づいてくる。
「優しい目をしてるのね」
「……誰だ」
ユウトは手を伸ばす。
だが――
光は、すっと離れていく。
「詩織…」
「行くな!」
「行かないでくれ!!」
「……」
「悲しい顔…」
「誰なんだ」
「大丈夫」
「あなたを救ってあげる」
――光が、消える。
「詩織!!!」
ユウトは目を覚ました。
見知らぬ天井。
荒い呼吸のまま、周囲を見渡す。
ベッド――
窓――
ドア――
そして――
誰もいない。
「ここは…?」
ふらつきながら立ち上がる。
ドアへ向かい、開ける。
そこには――
「気が付かれましたか」
「ユウト殿」
ウラジオが立っていた。
見覚えのある光景。
食堂――教会だ。
「詩織…詩織は?!!」
思わず声を荒げる。
「落ち着いてください」
低く、諭す声。
その時――
「起きたのね」
別の声が重なる。
「おはよう、ユウト」
振り向く。
そこに居たのは――シオリだった。
「し、詩織…?」
「お前、大丈夫なのか?」
「うん。」
短く、頷く。
「……」
そして――
「行きましょう、ユウト」
自然に手を取られる。
「お、おい」
戸惑うユウトをよそに、
そのまま引かれる。
「ちょっと待てって――」
言葉は続かない。
シオリは振り返らない。
迷いなく、
外へ向かう。
「ユウト殿!シオリ様!」
「どちらへ」
ウラジオの声が背中に飛ぶ。
だが――
止まらない。
返事もない。
教会の扉が開く。
外の光が差し込む。
ユウトは目を細める。
そのまま、二人は外へ消えた。
残されたウラジオは――
「……」
ぽかんと、
その場に立ち尽くしていた。




