表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の創造スキルを手に入れた俺、異世界で大儲けできると思ったら現代科学より上でした  作者: おりこー3


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/75

第68話:聖霊とドラゴン

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


昔、この地は草木すら育たぬ荒れ果てた大地だった。


雨は降らず、川は枯れ、土はひび割れていた。


人々は飢えに苦しみ、今日を生き延びるために奪い合い、殺しあった。


食べ物を求めて争い、わずかな水を求めて殺し合う。


互いの血で喉を潤し、互いの肉で腹を満たす。


そんな地獄のような日々が続いていたという。


ある日、そこへ一人の少女が現れた。


痩せた身体に、汚れた衣。


だがその瞳だけは、不思議なほど澄んでいた。


少女が「雨が降る」と言えば、乾いた空から恵みの雨が落ちた。


少女が「風が吹く」と言えば、熱に喘ぐ大地へ涼やかな風が流れた。



人々は恐れ、やがて敬った。


いつしか誰かがこう呼んだ。


――聖霊様。


その名は瞬く間に広まり、人々は少女を神の使いのように崇めた。


だが、少女の力をもってしても、人の争いだけは止められなかった。


雨が降れば奪い合い。


作物が育てば奪い合い。


恵みが増えるほど、人の欲もまた増えていった。


少女は何度も言葉を尽くした。


争ってはいけないと。


分け合わなければならないと。


けれど誰一人、耳を貸さなかった。


月日が流れ、少女はある日こう告げた。


「やがて天より、神の力を持つ者が現れます」


「その者が、この争いを終わらせるでしょう」


人々は歓喜した。


自分たちを救う英雄が来るのだと。


そして少女の言葉どおり、その日は訪れた。


夜空が裂けるような轟音とともに、天より巨大な影が舞い降りた。


漆黒の鱗。


山をも覆う翼。


黄金の瞳。


人智を超えた存在――ドラゴンだった。


だが人々は、その姿を見て震え上がった。


救い主ではない。


災厄だと。


誰かが叫び、誰かが槍を投げた。


その瞬間、人々は一斉に武器を取り、ドラゴンへ襲いかかった。


ドラゴンは何もしていなかった。


ただ、少女の言葉に導かれ、この地へ降り立っただけだった。


それでも刃は向けられた。


火を放たれ、石を投げられ、槍で突かれた。


傷ついたドラゴンは、咆哮ひとつ上げず、人々の前から姿を消した。


遠く、誰も近づかぬ山奥へと去り、孤独を選んだという。


ある日、少女はそのドラゴンを探しに旅立った。


深い森を越え、険しい崖を越え、辿り着いた先で、傷だらけのドラゴンと出会う。


ドラゴンは少女を睨んだ。


だが少女は怯えなかった。


その巨大な顔にそっと手を伸ばし、こう言った。


「なんて優しい目」


「そして、なんて悲しい顔」


その言葉を聞いた瞬間、ドラゴンは初めて涙を流したという。


誰にも理解されず、誰にも信じられず、ただ恐れられてきた存在だった。


少女だけが、その心を見たのだ。


少女は微笑み、言った。


「あなたを救ってあげる」


少女は村へ戻り、人々に真実を語った。


ドラゴンは敵ではないこと。


傷つき、孤独に泣いていたこと。


本当は誰より優しい心を持っていたこと。


だが、誰一人として信じなかった。


人々は少女が惑わされたのだと言い、怒り狂った。


少女は知っていた。


自分の言葉が届かぬことを。


自分の願いが無駄に終わることを。


それでもなお、信じたかった。


人が変われると。


誰かを理解できると。


その想いを知ったドラゴンは、三日三晩泣き続けた。


流れ落ちた涙は止まることなく、大地を満たし、やがて巨大な湖となった。


それが、この湖の始まりだという。


湖のほとりで、少女とドラゴンは束の間の時を過ごした。


言葉はなくとも、そこには確かな安らぎがあった。


だがその光景を見た人々は激怒した。


聖霊様が化け物に心を奪われた。


そう叫び、少女へ刃を向けた。


少女は抵抗しなかった。


人々の剣は、その小さな胸を貫いた。


倒れた少女の身体は、そのまま湖へ投げ捨てられた。


それを知ったドラゴンは、初めて咆哮した。


天地を揺るがす怒りだった。


振るわれた爪は大地を裂き、深い川となった。


翼が巻き起こした風は森となり、その森には異形の獣たちが生まれた。


吐息は瘴気となり、人々を震え上がらせた。


世界は滅びるかと思われた。


その時だった。


湖の水面に、少女の姿が現れた。


透き通る幻のような姿。


それでもドラゴンは、確かに少女だと分かった。


少女はただ微笑み、静かに首を振った。


もう悲しまないで、と。


もう怒らないで、と。


ドラゴンは吠えることをやめた。


そして少女の幻影を追うように、湖の奥深くへと沈んでいった。


二度と、その姿を現すことはなかった。


それ以来、夜になると湖の底は青白く輝くようになった。


人々は言う。


あれは今も湖の底で寄り添う、聖霊とドラゴンの魂の光だと。



またある者は言う。


あの光は、少女を奪った人の罪を忘れぬために灯り続けているのだと。



またある者は言う。


少女の命を奪い、少女の命を宿した聖剣が光り輝くのだと。



そして森に現れる魔物たちは、今もなおドラゴンの悲しみから生まれ続けているのだと。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ