第67話:聖霊祭の夜
「……俺?」
ユウトは
間の抜けた声を漏らした。
なぜ自分がシュウイチに勝ったことになっているのか。
まったく分からなかった。
「ええ……」
レグナスは静かに頷く。
「バルドカップ麺」
「実に見事な広告戦略でした」
(それって……)
(俺じゃなくて詩織なんだけど……)
ユウトが横目で見ると――
シオリが腕を組み
得意げなドヤ顔をしていた。
なんとも腹立たしい。
「い、いえ……」
ユウトは手を振る。
「それを考えたのは俺じゃなくて……」
「詩織です」
「ほう……」
レグナスの視線が
シオリへ向く。
「それでは、シオリ様にも――」
「“妙算”のような能力が?」
その問いに
シオリはあっさり答えた。
「私の能力は“超科学”です」
「イメージした現象を、素材さえあれば実現できる能力」
「……と、“言われています”」
(言われています……?)
ユウトは眉をひそめた。
だが次の瞬間、何かに気づく。
(……そうか!)
「なるほど!」
ウラジオが勢いよく頷いた。
「都市の発展は、シオリ様の能力あってこそだったのですね!」
「ええ、まぁ……」
シオリは曖昧に笑ってごまかした。
その時――
「お話中、失礼します」
奥から声がした。
洗い物を終えたシシリーとシスターが
こちらへ歩いてくる。
「そろそろ聖霊祭の時間ですよ」
シスターが穏やかに告げた。
「聖霊祭?」
ユウトが首を傾げる。
「あら?」
シシリーが目を丸くする。
「お二人とも、聖霊祭にいらしたのでは?」
「そうなんです!」
すかさずシオリが手を挙げる。
「けど、どんなお祭りかは分かってなくて!」
「なるほど」
シスターは優しく微笑んだ。
「では、歩きながらお話しいたしましょう」
「そうですね」
レグナスも立ち上がる。
「では、広場へ向かいましょう」
一同は席を立った。
外へ出ると、空はすでに夜。
満天の星が、村全体を包み込んでいた。
シシリーとシスターは、子供たちと手を繋ぎながら歩き出す。
その後ろを
ウラジオ。
レグナス。
ユウト。
シオリ。
順に続いていく。
静かな夜道。
祭り前の高揚感と
どこか神聖な空気が漂っていた。
やがて――
「ユウト様、シオリ様」
シスターが前を向いたまま口を開く。
「この村に、聖霊とドラゴンの伝説があることはご存知ですか?」
「内容は知りませんが……」
ユウトは答える。
「そういう伝説があることは、聞いたことがあります」
「では――」
シスターの声が少しだけ低くなる。
「そこからお話しいたしましょう」
暗い夜道の中で。
その横顔だけが…
わずかに重く沈んで見えた。
ユウトは無意識に息を呑んだ。
さっきまで笑っていた空気が、少しだけ変わった気がした。




