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第64話:ご挨拶
シオリの声に
男がゆっくり振り向いた。
子供たちは無邪気に笑いながら
別の場所へ駆けていく。
残されたのは三人。
「……おや?」
男は穏やかに目を細める。
「失礼ですが、どちら様でしょうか?」
「申し遅れました」
シオリが一礼する。
「シオリと申します」
「こちらは、バルド商会“の”ユウトです」
「……!」
レグナスの目がわずかに見開かれた。
「まさか、今話題のお二人と……」
「このような辺境の村でお会いするとは」
驚きながらも
笑みは崩さない。
「それで――」
「本日のご要件は?」
即座に切り返す。
「いえ」
シオリはにっこり笑う。
「今回はご挨拶だけですわ」
「それと……」
ユウトの腕を絡め取る。
「今夜のお祭りデートです」
「わ、ちょっと…」
「…」
「そうですか」
レグナスは動じない。
「ぜひ、楽しんでいってください」
あっさり引き下がった。
すると――
「おーい、みんなー!」
遠くから声が響く。
「ごはんだよー!」
優しい声色。
どこか聞き覚えがある。
ユウトが振り向く。
「……はぁ?」
さらに目を見開いた。
そこにいたのは――
エプロン姿のウラジオだった。
「おや!!」
「ユウト殿ではありませんか!」




