第63話:湖畔の村にいる男
しばらく街の上空を走っていた車は、 やがて高度を下げ始めた。
窓の外の景色が、 少しずつ地面へ近づいていく。
そのまま街の外へ出ると、 車輪が地面を捉えた。
ガタン、と大きく揺れる。
「ここから先は地上を走行します」
運転手が落ち着いた声で告げる。
「飛行型の魔物に狙われる可能性がありますので」
(街の外だと……?)
(いったいどこへ連れてかれるんだ……)
舗装もされていない道を、 車は揺れながら進んでいく。
二時間ほど経っただろうか。
視界の先に、 大きな湖が現れた。
夕陽を映した水面が、 静かに揺れている。
「知ってるかい?」
隣のバルドが口を開いた。
「この湖には、 精霊とドラゴンの伝説が残っていてね」
「湖の底には、 聖剣が眠っていると言われている」
「以前、 とある科学者が調査したんだが――」
「何も見つからなかった」
肩をすくめる。
「だがそれでも、 夜になると湖底が光り輝く」
「この世には“科学”が及ばない力が確かに存在する」
「……」
ユウトは黙って頷いた。
「ほれ、見えてきたぞ」
バルドが指差す。
その先には――
湖のほとりに佇む、 小さな村があった。
車は村の入口で止まる。
「お気をつけて」
運転手が頭を下げた。
「ありがとう」
「ステイル」
礼を言い、 バルドとユウトは車を降りる。
村の中は何かの祭りの準備中だった。
2人は建物の影に隠れ…
次の瞬間――
バルドの姿が揺らぎ、 シオリへ戻る。
「行こっか」
そう言って、 ユウトの手を掴む。
「ちょ、ちょっと待て!」
「この村は何なんだよ!」
「すぐに分かるわ」
シオリはそれだけ言って歩き出す。
しばらく進み、 一つの建物の前で立ち止まった。
「ここって……」
「教会?」
「そ!」
「入るわよ」
門を開け、 中へ入る。
そこには――
子供たちと笑い合い、 戯れている一人の男がいた。
その男へ向かって、 シオリが歩いていく。
「初めまして……」
微笑む。
「レグナス“さん”」
「!?」
言葉を失うユウトだった。




