第46話:荒療治
外に出ると――
すでに夕方になっていた。
オレンジ色の光が街を染めている。
「……」
ユウトは少しだけ空を見上げた。
(……変わったな)
服。
髪。
自分では、絶対にやらなかったこと。
それを――
ここまで一気に整えられた。
「……ありがとうございます」
ぽつりと呟く。
アメリの方を見た。
「きっかけを作ってもらって」
「助かりました」
「……いえ」
アメリは少しだけ微笑む。
「お役に立てたのであれば、何よりです」
どこか嬉しそうだった。
「それじゃ――」
ユウトが言いかける。
「また後で――」
「まだ終わってません」
即、遮られる。
「……え?」
「次、行きますよ」
「……は?」
そのまま腕を掴まれる。
「ちょっ――」
抵抗虚しく、再び車へ。
ドアが閉まる。
発進。
「……」
(まだあるのかよ……)
---
しばらく走る。
車が降下し止まった。
「到着しました」
古びた建物。
古びた看板。
「……接骨院?」
「はい」
アメリは当然のように頷く。
「次は、姿勢です」
「……はぁ……」
ユウトはため息をつく。
(そんなの……治るのか?)
---
中へ入る。
ギィ、と古い音。
そこにいたのは――
白髪。
腰の曲がった老人。
「……」
「……」
ユウトは静かに踵を返す。
「急用ができました」
ガシッ
「大丈夫ですから」
即、捕まる。
「いやいやいや」
「どう見ても大丈夫じゃないでしょ!」
小声で必死に抗議する。
(俺より腰曲がってるぞ……!?)
「さぁ」
老人が静かに言う。
「こちらへ」
施術台へ案内される。
「うつ伏せで」
「……」
逃げ場はない。
観念する。
うつ伏せになる。
「では――」
肩に、手が置かれる。
「……」
一瞬の静寂。
その直後――
ボキッ
「ぎゃあああああああ!!」
---
「はい、次」
「ちょっ、待っ――」
ボキッ
「いってぇえええええ!!」
---
――数分後
待合室。
「ぎゃああああああああああ!!」
奥から響く悲鳴。
アメリはソファに座り――
優雅に端末を操作している。
「いやああああああああ!!」
ピッ、ピッ。
画面をスクロール。
「無理無理無理無理!!」
既読。
「やめてぇえええええ!!」
返信。
「あああああああああああ!!」
――静かな待合室に。
ユウトの絶叫だけが、響いていた。




