第45話:強制改造
店内へ足を踏み入れる。
「……」
ユウトは思わず足を止めた。
中は、とにかく綺麗だった。
光沢のある床。
柔らかい照明。
キラキラとした空間。
そして――
並べられている服。
どれも一目で分かる。
(……高そうだ)
「これはこれは、アメリ様」
店の奥から、男が現れた。
落ち着いた佇まい。
いかにも店主といった雰囲気。
「彼に似合う服を用意してちょうだい」
アメリが即座に言う。
店主の視線が、ユウトへ向く。
「……これは……」
「いったい何が……」
「どうしてこんな事に……」
「……そこまで?」
思わず口に出る。
店主は小さく息を吐いた。
「お任せください」
「必ずや、お気に召す一着をご用意いたします」
「こちらへ」
そのまま試着室へ強制移動。
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数分後。
目の前には何着もの服。
それを見ては、ユウトを見る店主。
また服を見る。
(なんだこの時間……)
「こちらはいかがでしょう」
一着、手渡される。
「……」
とりあえず着る。
「……」
鏡を見る。
「……普通だな」
カーテン越しに声をかける。
「あの、すいません」
「着てみたんですけど」
「なんか、ちょっと普通すぎるっていうか――」
シャーーッ
「あっ、ちょっ」
勝手にカーテンが開かれる。
「うーん……」
店主が腕を組む。
「アメリ様、いかがでしょう」
「良いわね!」
即答。
「これにしましょう」
「あの、俺の意見は……」
「言いにくいのですが…」
店主が静かに言う。
「先程の服を“良い”と判断された方の評価は――」
「逆効果かと…」
「……」
ユウトは固まる。
アメリを見る。
口元がわずかに震えている。
(笑うな……)
「ユウト様」
アメリが優しく言う。
「着たい服と、似合う服は違うものです」
苦笑い。
「……」
ユウトの思考が止まる。
(……そういうもんなのか)
「では、次は髪です」
間髪入れず、次へ。
(髪だけに)
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支払いを済ませ、店を出てた。
そのまま車へ。
(確かに……)
(髪、ボサボサだったな)
数分後。
到着。
「……え?」
目の前には――
キラキラした建物。
「ここ……入るんですか?」
(無理だろ)
(場違いすぎる)
「さぁ、行きますよ」
アメリが腕を引く。
「いやいやいや、ここは」
「いいから、入りますよ!」
「いや、だってここ--」
「大丈夫ですから!」
「でも--」
「いいから、来なさい!」
逃げられなかった
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店内は女性ばかり。
「……えぇ……」
完全に萎縮するユウト。
「いらっしゃいませ!アメリ様」
若い女性が笑顔で迎える。
「本日はいかがなさいますか?」
「彼の髪をお願いするわ」
「かしこまりました!」
「お任せください!」
席に案内され座らされる。
周りに、女性スタッフが三人。
鏡越しに、顔をじっと見られる。
「……」
(やめてくれ…)
アメリも加わり――
ユウト抜きの四人で相談開始。
(俺の意見は……?)
数分後。
「では、いきますね」
カット開始。
チョキチョキと、軽快な音。
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しばらくして――
「シャンプーしますね」
シャンプー台まで案内される。
椅子に座る。
ゆっくり倒れる背もたれ。
仰向け。
(この姿勢……無防備すぎるだろ)
だが――
顔に布がかけられる。
「……」
(助かった……)
心の防御が保たれた感じがした。
水の音。
手の感触。
人に洗われる感覚。
首に力が入る。
「楽にしてくださいね」
ふわっと、頭を支えられる。
「……」
(……今、俺の頭の重さ……バレたな)
よく分からない羞恥。
それにしても、気持ちいい。
気づくと首元が温かい。
そのまま、マッサージ。
「ふぁああぁ……」
思わず声が出る。
(なんだこれ……)
全身の力が抜ける。
疲労が、流れていく。
完全に脱力。
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席に戻りドライヤー。
(この世界にもあるんだな……)
(まあ、いい)
(そんなことより)
(気持ちいい……)
鏡を見る。
「……」
別人。
ツヤがある。
整っている。
(……すごいな)
「マッサージしますねー」
肩。
肩甲骨。
ぐっと押される。
「あぁ……」
また声が出る。
(先週、2日も働いた疲れが……)
(消えていく……)
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最後の微調整。
カット。
「……」
(何が変わったか分からん)
「目を閉じてください」
眉のカット…初めてだ。
仕上げ。
整髪料。
(……いい匂い)
青リンゴのような香り。
丁寧にセットされていく。
(自分じゃ無理だ、これ)
「終了です」
スタッフが言う。
「いかがでしょうか?」
――ユウトではなく。
アメリを見る。
(なんでだよ)
「ありがとう!」
アメリが笑う。
「最高の出来よ」
「……」
ユウトも鏡を見る。
「……」
(……確かに)
(これは、いいな)




