第44話:ファッションモンスター
ユウトは、完成した服を見下ろす。
「やっぱり……完璧だな」
小さく頷く。
そして――
端末を手に取る。
カメラを起動。
一枚、撮る。
(自撮りなんて初めてだな…)
黒い部屋。
黒い服。
満足げな自分。
「よし」
そのまま送信する。
『お疲れ様です。
引越し完了しました。
試食会の為に新しい服も用意してみました。』
送信。
待つ。
「……」
10分。
「……」
20分。
「……」
30分。
「あれ?」
「返信、来ないな」
いつものテンションなら、すぐ来るはず。
さらに待つ。
40分。
――ドンドンドン!!
突然、扉が激しく叩かれた。
「ユウト様!アメリです!!」
「開けてください!!」
ドンドンドン!!
「ユウト様!!」
ユウトはゆっくりと立ち上がる。
(まさか……)
(現物を見に来たのか?)
(商品化の話か?)
「困ったな…」
(バルド商会にだけ肩入れする訳にはいかない)
(まぁ、今回だけ特別にいいか)
「……はい、今開けます」
扉を開ける。
そこにいたのは――
息を切らした、副社長アメリ。
明らかに様子がおかしい。
「すぐに来てください」
「え?」
「急いでください!!」
間髪入れず、腕を掴まれる。
そのまま――
引っ張られるように外へ。
「ちょ、ちょっと――」
気づけば車の中だった。
ドアが閉まる。
発進。
「……あの」
ユウトが口を開く。
「何があったんですか?」
「……」
返答はない。
それどころか――
アメリは、こちらを見ない。
ただ前を向いたまま。
(……なんだ?)
妙な空気。
車内に沈黙が落ちる。
しばらくして――
車が止まった。
外を見る。
「……店?」
看板。
服屋。
「え?」
状況が理解できない。
「行きましょう」
アメリがドアを開ける。
「え、あの――」
「早く!」
強引に促される。
店の前で立ち止まるユウト。
「……あぁ」
少し納得したように頷く。
「この店で商品化する手筈ですか?」
「……?」
アメリが振り返る。
「仰っている意味が分かりません」
一拍。
真顔で言った。
「すぐに着替えてください」
「……え?」
ユウトは固まる。
「大変申し上げにくいのですが――」
ほんのわずかに、視線を逸らす。
だが、すぐに戻す。
そして、はっきりと。
「ダサすぎます」




