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最強の創造スキルを手に入れた俺、異世界で大儲けできると思ったら現代科学より上でした  作者: おりこー3


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第4話:サイレント就職

商売を諦め、人通りから逃げるように裏路地に入り、創造スキルを試していた。


ビー玉、香水、ルービックキューブ、リバーシ、チェス。


売れそうなものを一通り作ってみた。



「いくら作っても、商売ができなければ意味がないよな…」



手の中の玩具を見つめながら、ため息をつく。



「やっぱりギルドに入るしかないか…」



転生前はニートだった俺も――

遂に“就職”するというわけだ。



「あいつら(両親)が聞いたら、泣いて喜ぶだろうな」



毎日のように嫌味を言われていた。


それが唯一の“人との繋がり”だった。



――なのに。




今はもう、会うこともできない。


胸の奥が熱くなる。


気づけば、視界が滲んでいた。



「……っ」



涙を拭い、顔を上げる。



「……行くか」



商業ギルドの建物へ向かうと、先程の衛兵が立っていた。


反射的に身を隠そうとしたが――



「おい、何してる!」



一瞬で見つかった。



「商業ギルドに加入するならここだ!早く入りなさい!」



予想外の言葉に、俺は固まる。



「……え?」


「あの石鹸、良かったな!頑張れよ!」


「あ、ありりっがとぅござぃまつ…!」


「なんだ、緊張してるのか?」


「い、いや、その…先程は、す、すいませんでしたっ!」


「正式に手続きしてくれれば問題ない!応援してるぞ!」


「はい!!!」


中に入ると、5~6人ほどの商人らしき人たちが、それぞれ職員と話していた。


受付には、同年代くらいの綺麗な女性。


「商業ギルドへようこそ!商標登録ですか?加入の申し込みですか?」


「あ、はい…ギルド加入希望でしゅ」


「(でしゅ?)……ではこちらの書類に記入してください」


転生前も含めて同年代の女性と話すのは久しぶりだ。

綺麗な若いお姉さんに萎縮してしまった。


(目の前にいるのはカボチャだ)

(目の前にいるのはカボチャだ)

(目の前にいるのはカボチャだ)


若干失礼ではあるが、必死に自分に言い聞かせながら書類を書く。


名前:ユウト

年齢:21歳

住所:無し

職歴:無し

犯罪歴:無し

特技:物作り

志望動機:お金を稼ぐため



(現世なら即お祈りメールだな…)



「……お願いします」



書類を差し、目を見て話せないので下を向く。



「21歳!?私と同じじゃん!」


「物作り得意なんだ!」


「志望動機、お金!正直でいいね!」



同い年と知った途端、急に距離感が近くなりタメ口になったが、不都合なところはスルーしてくれた。



「今までどんなものを作ったの?」



この質問、待ってましたと言わんばかりに、これまで創造した物を広げた。



ライター、石鹸、ビー玉、香水、ルービックキューブ、リバーシ、チェス



お姉さんはこの中からルービックキューブを手に取った。



「これはどうやって使うの?」



説明するより実演する方が早いと思い、綺麗に揃ったルービックキューブをクルクルと回してバラバラにした。



「これを回して、また色を揃えて遊びます」


「こうやって、、、あれ?、、、え?」



見られている緊張のあまり、揃えられない。


あー、これダメだな。


お姉さんも反応に困ってずっと黙ってる。


地獄のような沈黙の中、ひたすらルービックキューブをクルクル回す。



「あれ?おかしいな。あれ??」



永遠にも感じた沈黙も2分ほど経っただろうか。


お姉さんが口を開いた。


「これ面白い!!ユウトくん、これ売れるよ!」


「え?」


「ちょっと貸してみて!」


「あっ」



俺が何か言う前にルービックキューブを取り上げ、今度はお姉さんが回し始めた。



また沈黙が続いたが、俺の頭の中は別のことでいっぱいだった。



(今お姉さんの手、少し触れた)

(今お姉さんの手、少し触れた)

(今お姉さんの手、少し触れた)



5分ほど経ち、1面が揃った。



「ほら!!揃えたよ!凄いでしょ!」



なんなんだ。この可愛い生き物は?

1面揃えただけで子供のようにはしゃいでるぞ。



「あの、これ6面全部揃える遊びです」



「えー、無理だよ!でも面白い!ついつい夢中になっちゃった。」



――その時。



「次、俺にもやらせてくれ」


「いや、俺がやる!」


「私もやりたい」



後ろから声が聞こえてきて振り向くと、先程まで職員と話していた人達が集まっていた。



「待ちなさい。」



コツコツとゆっくり歩きながら、いかにも商人といった出で立ちの紳士が声を上げた。


その男性が言葉を発すると、周りの人達が道を開け、場の注目が一斉に集まる。


男性は俺の横に立ち、自己紹介を始めた。



「初めまして。私はこの街でウラジオ商会を営んでいる、ヨウム・ウラジオと申します。」



「はぁ、ユウトです。よろしくお願いします。」



思えば、これが俺とウラジオの出会いだった。

そして、俺の人生を決める運命の出会い。



「ユウト殿、そちらの商品を拝借しても宜しいですかな?」


「どうぞ」



受付のお姉さんからルービックキューブを受け取り、ウラジオはクルクルと回し始めた。



「なっ!むむ!なんと!!うー、こうか?」



気がつくと、ギルド内の注目はただ一点。

ルービックキューブに集まっていた。



----



どのくらいの時間が経っただろうか。



「できた!!できたぞ!!!!どうだ!」



なんと、ウラジオが6面すべてを揃えてしまったのだ。


さっきまでの紳士な姿はどこへやら、無邪気に喜んでいる。



「これは面白い!この商品は絶対に儲かるぞ!!」


「ユウト殿、この商品の商標登録がまだでしたら、私に譲って頂きたい。もちろん、それなりのお礼は致します!」


「いや、でも…」



商人ギルドに加入するために来ただけなのに、いつの間にか商談になってしまった。



「5000万!5000万円でいかがでしょう!」


「5000万!?!?売ります!!」



即決してしまった。



今更だがこの世界、金の単位がゴールドやギルではなく円なのだ。


物価も現代の日本とほぼ同じ。

実に分かりやすくて良い。



「ユウトくん、本当にいいの?」



受付のお姉さんが心配してくれているが、今の俺の全財産は、村でライターと石鹸を売って稼いだ微々たるものだ。


目先の金に目が眩むのは仕方がない。


それに、路上販売でチマチマ稼ぐより、一括で金が手に入る方が働かなくていいし、俺には合っている。



「はい!それでお願いします!」



5000万円が手に入ると思うと、お姉さんへの萎縮もどこかへ消えてしまった。



「商談成立ですね!」


「今夜お時間はありますかな?代金のお支払いと、今後の話もしたい。宜しければディナーでもご一緒に――」


「ぜひ、お願いします。」


「では、今夜6時に迎えの車を用意します。」


そう言うと、ウラジオはニコニコしながら去っていった。


--



得体の知れない玩具に5000万もの高額取引。


周囲の人たちもざわつき始めた。



「いったい何の騒ぎだ?これは」



奥の扉から、大柄な男性が面倒くさそうに出てきた。



「マスター、お疲れ様です。」


「ケイト、何かあったのか?」



受付のお姉さんとの会話から、この人がマスターのようだ。


そして、お姉さんの名前がケイトさんということも分かった。



「それが、本日うちのギルドに加入したこちらのユウト様の商品がとても良い品物だったのですが、ウラジオさんが居合わせて……ゴニョニョ、ゴニョニョ」


「――ウラジオか。あいつは相変わらず手が早いな」



(ん?今『加入した』って言ったよな?俺ってもう商業ギルドに加入済みなのか?聞き間違いか?)



「おう、俺はこの商業ギルドのギルマス、ワイトだ!よろしくな」


「申し遅れました。私は商業ギルド副マスターのケイトです。ユウトくん、よろしくね!」



「ええええ?お姉さんが副マスター?受付じゃなかったの??」


「人件費削減のために、私が受付をすることもあるの」



転生前にも聞いたことのある“人件費削減”。

まさか異世界でも聞くとは思わなかった。



「そ、そうなんですね。えっと、それで、ギルド加入の件はどうなりますか?」


「あぁ、ギルド加入は書類に名前を書くだけだよ!あとは月末締めで売上の10%を、毎月1日にギルドに納めてね!さっきの契約も加入後だから、その……ねっ!」



しくじった!



お姉さんに書類を渡す前にウラジオに商標権を売っていれば、10%取られなかったのか!


5000万の10%って500万だろ!


これだけあれば1年は働かずに悠々自適に生活できたのに!!


しかし、加入済みだと知らなかったわけだし、法的にどうなんだ?


……いや、まぁ今回は高い勉強料ってことで、今後のこともあるし何も言わずに引き下がるか。



はぁ……



ウラジオとの出会い、そして商業ギルドの“搾取”。

それが、彼の経済支配の第一歩だった

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