第39話:バルド商会の実力
見たこともない機械が、見たこともない動きをしている。
だが――
そこで生み出されているのは、見覚えのある形だった。
カップ麺。
(……マジか。何だこの光景は)
ユウトは思わず足を止める。
つい数時間前。
自分が見せただけのものが――
もうここまで形になっている。
(バルド商会……とんでもないな)
素直にそう思った。
「いかがでしょうか?」
隣でアメリが問いかける。
「……」
(いや、俺にこれをどう評価しろと)
内心でツッコミを入れつつも――
「すごいですね」
「アメリさんにお願いして正解でした」
無難に、しかし本音も混ぜて答える。
一瞬の沈黙。
「……い、いえ……っ」
アメリの声がわずかに揺れた。
「そ、そのように言っていただけるほどのものでは……」
言葉が少し詰まる。
視線もほんのわずかに逸れる。
「まだ、改善の余地も多く……」
普段の落ち着きとの落差が大きい。
(褒められ慣れてないのか?)
「……ありがとうございます」
最後だけ、なんとか整える。
だが、どこか嬉しそうだった。
(分かりやすい人だな)
ユウトは小さく息を吐く。
「それで」
「いつ頃から販売する予定ですか?」
「はい」
アメリはすぐに表情を引き締める。
「まずはバルド様にご試食いただき、その判断を仰ぎます」
「そのため、早くても三日後の発売となります」
ユウトは軽く頷く。
「もしよろしければ」
アメリが続ける。
「試食会にユウト様もご参加いただけませんか?」
「え?」
思わず聞き返す。
「いいんですか?」
「はい」
「バルド様との謁見も兼ねておりますので」
「……なるほど」
少し考える。
「試食会は明後日の夜を予定しております」
(明後日……)
(入居日とかぶるな)
だが――
(夜なら問題ないか)
「では、それでお願いします」
「かしこまりました」
「当日もお迎えに伺います」
「あ、その日なんですけど」
ユウトが補足する。
「新しい部屋に入居する予定でして」
「今のホテルとは別の場所にいると思います」
「承知しております」
即答だった。
「新居までお迎えに上がります」
「……え?」
ユウトは思わず聞き返す。
「場所、分かるんですか?」
「はい」
アメリは当然のように答える。
「既に確認済みです」
「……」
(こわ)
思わず言葉を失う。




