第38話:バルド商会の技術力
扉を開ける。
やはり――いた。
「お迎えに参りました。ユウト様」
そこに立っていたのは、バルド商会副社長アメリ。
完璧な姿勢。
落ち着いた声。
隙のない表情。
「……」
ユウトは固まる。
(さっきのテンションはどこ行った)
あのメッセージとのギャップ。
理解が追いつかない。
「どうかされましたか?」
アメリが心配そうに覗き込む。
「あ、いえ……」
「少し驚いただけです」
わずかに声が震える。
「……そうですか」
一拍。
アメリは軽く頭を下げた。
「申し訳ございません」
「お渡しした端末ですが」
「商会の社員も使用しておりますが、稀に不具合が発生し」
「正常に返信ができない事例が確認されております」
「ユウト様の端末も、恐らく同様の不具合が生じているかと」
「……」
(不具合……ねぇ……)
ツッコミたい。
だが――やめておく。
「すぐに新しい物とお取替えいたします」
「あ、あぁ……いえ」
ユウトは咄嗟に話題を切り替える。
「ところで」
「生産ラインが整ったと聞きましたが」
「はい」
アメリの表情が仕事の顔へと変わる。
「是非一度、ユウト様にご確認いただきたく」
「ずいぶん早いですね」
「商売はスピードが命ですから」
即答だった。
「……分かりました」
「見物させてください」
「おもてに車を用意しております」
ホテルを出る。
外には一台の車。
黒塗りの機体。
乗り込む。
運転席には黒服の男。
無駄のない動き。
ドアが閉まる。
次の瞬間。
車体が浮き上がる。
そのまま、空へ。
眼下に広がる街。
車内。
「今後の展開ですが」
アメリが口を開く。
「味のバリエーション追加を検討しています」
「例えば、味噌、塩、辛味――」
「いいですね」
ユウトは頷く。
(ちゃんと見えてるな、この人)
内心で評価する。
話しているうちに――
景色が変わる。
工業区域。
広い。
とにかく広い。
建物群。
煙。
動き回る人影。
「……でかいな」
思わず漏れる。
車が降下する。
そのまま――
垂直に、建物の中へ。
「……」
違和感なく侵入。
停車。
同時に天井が閉じる。
そのまま車は走り出す。
(中を走るのかよ……)
さらに進み――
そのまま、車ごとエレベーターへ。
「……マジか」
静かに上昇。
停止。
車のドアが開く。
「こちらです」
アメリが先に降りる。
ユウトも続く。
大きな扉が開かれる。
その先――
「……」
言葉を失う。
無駄のない構造。
整然と並ぶ設備。
研ぎ澄まされた空間。
まるで――
SFの基地。
(なんだこれ……)
(作り込みすぎだろ)
思わず見渡す。
「……どうぞ」
アメリが静かに促す。
ユウトは一歩、足を踏み入れた




