第33話:バルド商会
バルド商会。
重厚な扉をくぐり、そのまま奥へ進むと――
「お客さん連れてきたっすー」
リオスが、受付の女性に声をかけた。
受付の女性が顔を上げる。
そして――、一瞬で表情が変わった。
「ユ、ユウト様、本日はどのようなご要件で?」
「……」
リオスが固まる。
(あれ?)
「……約束はしてないんですが」
ユウトは静かに言う。
「カザフさんか、アメリさん、いらっしゃいますか?」
「かしこまりました。あちらでお掛けになってお待ちください」
落ち着いた対応。
ユウトは軽く頷き、椅子へ向かう。
その横で――
「……え?え??」
リオスがまだ理解できていない顔で立っていた。
「……どうかしました?」
「いや……その……」
混乱している。
理解が追いついていない。
数分後。
足音。
それも――速い。
「ユウト様ー!」
勢いよく現れたのは、カザフと――
アメリ。
少し息が上がっている。
その瞬間――
「えええええ!!!」
リオスの声が漏れる。
目が見開かれる。
(副社長……!?なんで……!?)
一瞬で背筋が伸びる。
さっきまでの軽い空気が消えた。
(俺……とんでもない人連れてきたんじゃ……)
完全に理解が追いついていない。
ただ立ち尽くす。
「昨日ぶりですね」
「……いや、これは驚きましたよ」
カザフが苦笑する。
「まさか翌日に来られるとは」
アメリも落ち着いた様子で頷く。
「本日はどういったご用件で?」
「その前に」
ユウトは一度、後ろを見る。
「彼にここまで案内してもらいました」
視線の先――リオス。
「助かりました。ありがとうございます」
「……え、あ、いや……!」
完全に挙動がおかしい。
「……ん?」
カザフが視線を向ける。
「お前……リオス!」
「は、はいっす……!」
反射的に背筋を伸ばす。
「よくやった!!」
ぽん、と肩を叩く。
「え」
「お前はやる奴だと思ってた!」
アメリも続ける。
「貴方はこの商会の救世主よ!リオス!」
「……あ……」
言葉が出ない。
(副社長に名前呼ばれた…)
頭が真っ白だった。
「では、こちらへ」
アメリが案内する。
歩きながら――
「本日の用件ですが」
ユウトが口を開く。
「少し、新しい商売の話を」
カザフとアメリの目が変わる。
「……それはそれは」
「食品関連です」
アメリがすぐに判断する。
「では、担当者も呼びましょう」
足を止めず、端末を操作する。
「はい」
案内された部屋。
昨日とは違い会議室のような部屋だった。
「こちらでお待ちください」
アメリが言う。
「担当者が来るまで少々お時間をいただきます」
「分かりました」
ユウトは席に座る。
するとカザフが一歩前に出る。
「私は食品分野は専門外ですが」
一拍置き――
「何かお役に立てるかもしれません」
視線は真っ直ぐ。
「立ち会ってもよろしいですか?」
「問題ありません」
即答。
「では」
カザフとアメリも席につく。
数分後。
扉がノックされる。
「失礼いたします」
入ってきたのは、落ち着いた雰囲気の男。
「食品部門を担当しております、ガルドと申します」
丁寧に頭を下げる。
視線がユウトに向く。
「ユウト様ですね?お会いできて光栄です。」
「はい」
「お話は簡単に伺っております」
椅子に座る。
「新しい食品、ということでよろしいでしょうか」
「はい」
ユウトは頷く。
そして――
テーブルの上に、それを置いた。
「カップ麺です」
静かに、しかし確実に。
場の空気が変わる。




