第24話:引きこもってたら呼び出された件
ホテルに引きこもって――
10日。
「……はぁ」
ユウトはベッドの上で転がっていた。
手には漫画。
だが――
「……飽きた」
閉じる。
床には相変わらずの漫画の山。
だが、そのどれも――
“知っている内容”。
「そりゃそうか……」
創造できるのは、読んだことのあるものだけ。
つまり。
「新しいの、読めないんだよな……」
天井を見上げる。
食べ物も同じ。
知っている味しか、出せない。
「……」
やることがない。
完全な自由。
だったはずなのに。
「……暇だな」
ぽつりと呟く。
その時。
コンコン。
扉をノックする音。
「っ……!」
反射的に、体が強張る。
もう一度。
コンコン。
「……」
咄嗟に、布団を頭から被る。
息を潜める。
(やめろ……)
頭の奥に、記憶がよぎる。
暗い部屋。
閉じた扉。
――コンコン。
『いつまでそうしてるの?』
母親の声。
『あんた、このままでいいと思ってるの?』
『いい加減にしなさい』
「……っ」
体が固まる。
また――
コンコン。
現実の音。
「……」
違う。
分かっている。
ここは、あの場所じゃない。
それでも――
「……誰だよ」
小さく呟く。
すると。
「おーい、兄ちゃん」
扉の向こうから声。
「いるんだろ?」
聞き覚えのある声。
「……ロイド?」
一瞬で現実に引き戻される。
布団を跳ねのける。
ベッドから飛び起きる。
「今開ける!」
慌てて扉へ向かう。
ガチャ。
扉を開けると――
そこにいたのは、ロイドだった。
「やっと見つけたぜ」
軽く笑う。
「……何かあったのか?」
ユウトが聞く。
ロイドは肩をすくめる。
「旦那がな」
「兄ちゃんに会いたいそうだ」
「……ウラジオが?」
「ああ」
短く頷く。
「すぐ来れるか?」
ユウトは一瞬だけ考え――
「……分かった」
頷いた。
---
ロイドの運転でウラジオ商会へ。
入口。
そこにはすでに――
ウラジオが立っていた。
その後ろには、レイヴン。
「お待ちしておりました。ユウト殿」
丁寧に頭を下げる。
「ささ、こちらへ」
すぐに案内される。
その様子を――
受付の女性が、ぽかんと見ていた。
言葉が出ない。
明らかに、異様な光景。
そんな顔だった。
案内されたのは――
豪華な応接室。
ふかふかのソファ。
重厚なテーブル。
(やっぱり落ち着かない…)
「こちらをご覧ください」
ウラジオが手を差し出す。
視線の先。
グラフ。
ラムネの販売実績。
「……これ」
ユウトが目を細める。
右肩上がり。
明らかに異常な伸び。
「ラムネが人気すぎて供給が追いついておりません」
ウラジオが、嬉しそうに言う。
「店に出せば、必ず完売」
「……マジかよ」
ユウトが呟く。
「ただ」
ウラジオの表情が、わずかに変わる。
「ひとつ問題がございます」
空気が少しだけ締まる。
「我々の商品を定価で購入し――」
「倍額以上で販売する者が現れております」
「……転売、か」
ユウトが呟く。
この世界にもいるのか。
転売ヤー。
「現在は、1人3点までの購入制限を設けております」
「ですが――」
ウラジオは言葉を切る。
「それでも、完全には防げておりません」
静かな問題提起。
ユウトはグラフを見つめたまま――
「……なるほどな」
小さく呟いた。




