第22話:創造スキル
バルド商会、本館。
社長室。
重厚な机。
整えられた室内。
その中央に立つのは――
バルド。
背後には、副社長アメリ。
「出かけてくる」
短い一言。
「……どちらへ?」
当然の確認。
だが――
「……」
バルドは答えない。
ほんの一瞬だけ、視線を外す。
「……承知しました」
アメリはそれ以上追及しない。
扉が開く。
そして――
静かに閉じられた。
場面は変わる。
ユウトはホテルの一室にいた。
拠点に住むまでの仮住まい。
部屋は――
散らかっていた。
床に物が転がり、机の上も雑然としている。
原因は一つ。
「……難しいな」
創造スキル。
ユウトはこの数時間、ずっと試していた。
「もう一回……」
手をかざす。
イメージする。
パソコン。
形。
構造。
――生成。
机の上に“それっぽいもの”が現れる。
だが――
「……やっぱりか」
ただの箱。
見た目だけの、パソコン。
「中身が分からないとダメか……」
スマホも。
ゲーム機も。
すべて同じ結果。
理解しているものしか創れない。
「くそ……」
小さく舌打ちする。
今度は創造する場所について試してみた。
目線を離れた引き出しに合わせ手をかざす。
イメージするのは中央に"成功"と書かれた白い紙。
――生成。。
引き出しを開けるとそこにはイメージした通りの紙が入っていた。
中央には"成功"と書かれている。
なるほど。
「これは使えそうだ。」
「次は、これはどうだ……」
今度は方向を変える。
食べ物。
卵。
イメージは簡単。
――生成。
手の中に、生卵が現れる。
「これはいける」
次。
目玉焼き。
――生成。
皿の上に、目玉焼き。
「……できた」
温かさまで再現されている。
「じゃあ、これは?」
ビーフストロガノフ。
名前は知っている。
だが。
「……食べたことない。」
味も。
何一つ、分からない。
それでも――
試しにイメージする。
――生成。
次の瞬間。
皿の上に現れたのは――
茶色い液体。
その中に、牛肉のようなものが沈んでいる。
「……」
湯気は立っている。
それっぽくは見える。
だが――
「なんだこれ…」
とろみはある。
だが、均一じゃない。
色も、妙に濁っている。
匂いも味も――
「……微妙だな」
知っている料理のどれにも当てはまらない。
「これが……ビーフストロガノフ?」
自分でも分かる。
違う。
完全に、何かがズレている。
「中途半端にイメージした結果か……」
皿を見下ろす。
「再現じゃなくて、“それっぽい何か”になってる」
静かに結論を出す。
名前だけ。
印象だけ。
そんな曖昧な理解では――
“まともなもの”は作れない。
「……なるほどな」
小さく息を吐く。
「これが限界か」
ベッドに倒れ込む。
天井を見上げる。
「無双できる、とか言ってたよな……」
思い出す。
あの“自称神”。
「……どこがだよ」
小さく呟く。
できることはある。
だが――
“何でもできる”わけじゃない。
「……俺の理解力次第かよ」
知らないものは作れない。
理解できないものは動かせない。
「……俺、弱くね?」
静かな絶望。
部屋の中には、失敗作が残っていた。
動かない機械。
歪な料理。
そして――
何もできない、自分。




