第19話:住めば都
工場の見学を終え、外に出る。
一通りの確認も済んだ。
「……さて」
ウラジオが口を開く。
「ユウト殿。この後のご予定はいかがなさいますか?」
「住む場所を探そうと思ってます」
「なるほど」
小さく頷く。
「残念ですが、当商会では居住用の不動産は取り扱いがなく…」
(まあ、だろうな)
「とりあえず商業ギルドに行ってみます」
「でしたら、お送りいたします」
ロイドの運転で商業ギルドへ向かう。
到着後。
「ではユウト殿、また」
「ええ、また」
車はそのまま走り去っていった。
(さて……)
ユウトは商業ギルドに入る。
「……またお前か」
ギルドマスターのワイトが、面倒そうにこちらを見る。
「住む場所を探してまして」
ワイトは数秒見つめる。
そしてため息。
「あのなぁ…うちは何でも屋じゃねぇんだぞ」
「ですよね」
「不動産なら、通りを二本向こうだ」
「“ラント不動産”に行け」
「助かります」
用は済んだ。
ユウトはそのままギルドを後にする。
扉に手をかけた、その時。
「あぁ、ちょっと待て」
呼び止められる。
「この辺の相場だが――」
「8万から20万ってとこだ」
「立地と設備で変わる」
(……ちゃんと教えてくれるんだな)
「助かります」
「無駄にぼったくられんなよ」
「ありがとうございます。」
軽く手を上げ、そのまま外へ出る。
通りを二本抜けると、不動産屋が見えてきた。
中に入ると、すぐに男が対応に出てくる。
整った身なり。
自然な笑顔。
(いかにも…やり手だな)
「本日はどのような物件をお探しで?」
「極力、安いところで」
一瞬だけ表情が曇る。
だがすぐに営業の笑顔へ。
「もちろん可能ですが……」
「安すぎる物件は生活の質が下がる可能性がございます」
端末を操作する。
「例えばこちらなどいかがでしょう」
表示されたのは2LDK。
「家賃14万円、管理費12000円です」
(広いな)
(部屋数も多すぎる)
「もう少し狭い部屋はありますか?」
一瞬の歪み。
すぐに戻る。
「もちろんございます」
表示されたのはワンルーム。
家賃7万。
「他にも2件ほどご案内できます」
「一応見てみます」
「本日はお車でご来店ですか?」
「いえ、歩きです。」
「では、物件までお送り致します。」
店を出て車へ向かう。
走り出してすぐに分かる。
(……荒い)
ロイドの運転とは違う。
無駄に揺れる。
最初の物件に到着する。
外観は綺麗だった。
共有スペースもボロいわけではない。
ごく普通。
部屋に入る。
狭い。
暗い。
日当たりはあまり良くない。
「いかがでしょうか?」
ユウトは部屋を見回す。
(……いいな)
(なぜか落ち着く)
転生前に5年間引きこもった部屋にどこか似た雰囲気だった。
しばらくの沈黙。
「……正直に申し上げますと」
男が少し声を落とす。
「こちらの物件は、特別人気があるわけではありません」
(まあ、そうだろうな)
「ここにします」
「……はい?」
空気が止まる。
「ここで大丈夫です」
男が言葉を失う。
「……まだ、他に2件ほどご案内予定ですが」
「大丈夫です」
即答。
「……本当によろしいのでしょうか?」
「問題ないです」
「はい」
ユウトは室内を軽く見渡す。
「これくらいの方が落ち着くので」
「狭い方が動かなくていいですし。」
沈黙。
男は小さく息を吐く。
「……承知いたしました」
「それでは、こちらの物件でお手続きを進めさせていただきます」
(話が早くて助かる)
ユウトは軽く頷いた。




