表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の創造スキルを手に入れた俺、異世界で大儲けできると思ったら現代科学より上でした  作者: おりこー3


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/75

第18話:カチッ。

工場の視察を終えた後。


ウラジオが静かに口を開いた。



「もう一つ、お見せしたいものがあります」


「まだ試作段階ではありますが――ご覧いただく価値はあるかと」


「試作、ですか?」


「ええ」



短く頷き、歩き出す。


案内されたのは、生産ラインから少し離れた区画だった。


先ほどまでの機械音はなく、代わりに――

カチャ、カチャ、と乾いた音が響いている。


(……手作業か)


中に入ると、職人たちが何かを組み上げていた。



「……これ」



ユウトは差し出されたそれを手に取る。


六面に色分けされた立方体。


軽く回す。


カチッ。


(……問題ないな)


滑らかに動く。引っかかりもない。



「ユウト殿からお譲りいただいた標章と構造をもとに、試作しました」



ウラジオが説明する。



「現状では精度維持のため、手作業に頼っておりますが……」



「完成度としては十分かと」


(十分どころか完成してるだろ)



内心でツッコむ。


周囲では職人たちが、一つ一つ丁寧に調整している。


量産にはまだ遠い。


だが――精度は高い。



「……やはり、ここがネックですか」



ユウトが呟く。



「ええ」



ウラジオは頷く。



「構造が細かく、工程が多い」



「ですが――」



一拍置く。



「量産化の手筈は進んでおります」



その声音に迷いはない。



「時間の問題、ですか」


「ええ」


短く、力強く肯定する。



ユウトはキューブを回し続ける。


カチッ。

カチッ。



(……これ、地味に時間持ってかれるな)



その様子を見ていたウラジオが、試作品を一つ手に取った。



カチッ。



カチッ。


「――あの時は、運良く」


カチッ。


「なんとか、全面を揃えることができましが」


カチッ。

カチッ。



ウラジオの声が続く。


「同じことを、もう一度やろうとすると……」


カチッ。

カチッ。


わずかに手が止まる。



「途端に難しくなる」



再び回し始める。



カチッ。

カチッ。

カチッ。



「分かっているはずなのに、思い通りにいかない」


カチッ。



「だからこそ、続けてしまう」



(……完全にハマってるな)



会話が途切れる。


ただ、音だけが静かに響く。



カチッ。

カチッ。



しばらくして――

ウラジオが小さく息を吐いた。



「……いけませんね」


「時間を忘れます」



ウラジオは手を止め、キューブを見つめる。

そして、静かに言い切った。



「これが、この商品の価値です」



迷いのない、答えだった。



(まあ……もう俺の仕事じゃないしな)



ユウトは内心で肩の力を抜く。


権利はすでに手放している。


つまり――

(面倒な工程は全部あっち持ち)



それでいい。


再び、キューブを回す。


カチッ。


工場の一角で。


ただの玩具が、確かに人の時間を奪っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ